34 / 114
一夜一夜にヒの一夜が消えました……
ひとつ、大問題があります
しおりを挟む「じゃあ、俺も帰るが」
と中で泰親の耳を引っ張っていた八神が言う。
中原が言っていたので、これ以上伸びないのか気になったらしい。
泰親は渋い顔をしながらも、されるがままになっていた。
「カフェの話は進んでるのか」
と八神に問われ、
「いや~、それが一個問題がありまして」
とのどかが言うと、貴弘が、
「……一個どころじゃないだろう」
と苦い顔をして言ってくる。
まあ、確かに。
だが、他のことはなんとかなりそうなのだが。
ひとつだけ、大きな問題があるのだ。
「自宅カフェの許可をもらうには、店舗スペースと居住スペースをはっきり分けないといけないらしいんですよ。
二階建てなら、二階を居住スペースにすればいいみたいなんですけど。
此処、平家なんで。
はっきりした仕切りが必要みたいなんです。
襖じゃ駄目なんですかね?
あと、此処、古い造りで、大きなシンクが二個あるのはいいんですが。
キッチンも、店舗用と自宅用と分けないといけないので、二箇所いるみたいなんですよね」
「ほら見ろ。
大掛かりな工事が必要だろうが」
と貴弘が鬼の首をとったように言う。
「やめておけ、カフェとか。
小洒落てたら、更にイケメンが来るぞ。
呪いにかかっていなくても」
いや、いけないのですか、イケメンの客が来ては……と思いながら、のどかは貴弘を見上げる。
「……そんな顔をしても駄目だ」
うっ、とつまった感じで、貴弘が言ってくる。
いや、どんな顔してるんだか、自分ではわからないのだが。
だが、そこで、うーん、と唸った八神が言ってきた。
「じゃあ、そこの鍵を開けろよ」
えっ?
と二人が八神を振り返る。
「俺は帰って寝るだけだから、一部屋あれば充分なんだ。
此処とうちとの仕切りの鍵を開けて通れるようにしろよ。
ああいや、閉めたままでも、あっちが居住スペースですって言えばいいのか。
どうせ、一軒の家なんだから、うちを居住スペースってことで申請すればいいじゃないか」
「えっ、でも、それでは申し訳ないです」
とのどかが言うと、
「そうだな。
お前がカフェの話をしてきたとき、迷惑かけないようにしますから、とかいう幻聴が聞こえた気がしたんだが。
まあ、お前がうち側で寝起きしても、俺は困らないから、別にいい」
と八神は言う。
神っ。
神っ。
とのどかと泰親は祈るように手を合わせ、八神を見た。
「……いや、神はお前じゃないのか」
と八神は泰親に言うが、
いや、その人は神主だ。
何故、一緒に、アーメンな感じで祈っているのかはよくわからないのだが……。
10
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
おデブな私とドSな魔王さま♪
柳乃奈緒
キャラ文芸
体重があと少しで100キロの大台に到達する
おデブでちょっぴりネガティブな女子高生の美乃里。
ある日、黒魔術を使って召喚してしまった
超ドSな魔王に、何故か強制的にダイエットを強いられる。
果たして美乃里は、ドSな魔王のダイエットに耐えられるのか?そして、ハッピーエンドはあるのだろうか?
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
お供え物は、プロテイン
Emi 松原
キャラ文芸
寺の跡取り息子である奥村 安明、神社の跡取り息子である藤江 陽一、そしてマッチョである岡地 虎之助は幼なじみの大学三年生で別々の大学に通っている。彼らは寺や神社、そして口コミで持ち込まれる依頼を解決していたことから、「奇怪な人物達」、通称《キカイ》と呼ばれるようになっていた。《キカイ》の三人が、怪奇現象を解決していく短編連作のホラーコメディ。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる