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呪いの(?)雛人形
それだと私が変な人です
しおりを挟むまた店の方に戻り、今度は暖かい豆茶をいただいた。
民芸品の陰から、今にもあやかしがひょっこり顔を出しそうな店内で、乃ノ子はイチに訊いてみる。
「そもそも雛人形はなんで動いてるんですかね?」
「そりゃあ……雛人形に訊いてみないとわからないだろうな」
ちょっと訊きたくないな、と乃ノ子は思った。
答えがあっても怖いし。
なくても怖い。
なかった場合、自分が雛人形に話しかけている変な人になってしまう、という意味で怖い。
「そもそも雛人形に意識ってあるんですかね?」
「長く大事にされてきた人形にはあるんじゃないか?
まあ、意識があるにしても、ないにしても。
しゃべらないから、自分でそうしているのか、何かに操られて、そうしているのかはわからないが」
「なにかってなんでしょうね」
さあな、と言いながら、イチは店内を見回している。
ちょっと怪しげにも見えるこの店内に、なにかヒントとなるような因縁や怨念はないかと思い、探しているのかもしれない。
会長はやってきたお客さんと話し込んでいて。
近所の人らしい、そのおじさんはこちらを見て。
「あれが探偵さんと助手の人かい。
漫画とドラマ以外で初めて見た」
などと言っている。
……ちゃんと助手だと伝わっていたようだ、と思う乃ノ子たちを見て小声でお客さんが言う。
「サインもらって店に飾ったら?」
いやあの、探偵ですよ?
それも怪しげな都市伝説探偵ですよ?
普段は猫だか、あやかしだかを探している。
そんな人のサイン飾るとかどうなんですかね、と思いながら、乃ノ子は奥の座敷に続く廊下を見た。
そこをとことこ歩いてくる雛人形を想像し、ちょっと怖くなる。
雛人形たちは自分の意志で動いているのか。
それとも、なにかに操られているのか。
いつの間にか、同じ方角を見ていたイチが言う。
「実際にこの目で見ていなければ。
会長たち、持ち主の方が操られていて。
知らないうちに自分で雛人形を元の位置に戻してるんじゃないかと思うところだが」
「あ、そういう話って聞きますよね。
操られてるとかじゃなくて、実は自分が無意識のうちにやってた、みたいな。
自分の中にある罪の意識とかトラウマによって、やっちゃうらしいですけど」
「……雛人形になんの罪の意識があるんだ、あの会長」
「間違って並べちゃって、すみませんとか?」
「そんなので罪の意識を覚えないといけないのなら、うちの父親は一年中、罪の意識により、雛人形並べてるぞ」
なにかこう、目に浮かぶようだな、と乃ノ子は思う。
人の良さそうなイチの父親が、間違って並べて奥さんに怒られているところが……。
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