眠らせ森の恋 おまけ

菱沼あゆ

文字の大きさ
3 / 8
私、おそろしいものを手に入れてしまいました……

では、一杯いれてやろう

しおりを挟む
 
 急になにか主張し始めたぞ。

 久しぶりに始まったつぐみの演説。

 奏汰は、見るからに一生懸命、という風情で語るつぐみを面白おかしく眺めていた。

 しかし、何故、コタツで此処まで頑張る……。

 貴方、お父様と私とどちらを取るんですか、というくらいの勢いだ。

「奏汰さん、結婚するとき、ともに手を取り合い、新しい家庭を作っていこうと言ってくれたではないですかっ」

 ま、確かに言ったが。

「今まで育ってきた環境が違うので、衣食住に対する考え方が違うのも当然です。

 だから、お互いの意見をすり合わせながら、この家のルールを作っていくべきだと思いますっ」

 いや、お前、すり合わせる気、全然ないだろ。

 よく考えたら、リビングにコタツがあっても、自分が入らなければいいだけの話なので、最早、どっちでもいい気もしていたのだが。

 一生懸命語るつぐみの姿が微笑ましかったので、黙って眺めていた。

「昔、おばあちゃんちには、掘りごたつがあったんですよ」

 なんか話がよそに流れていってるぞ。

「中に携帯ゲーム機を落としては、みんなが焼いていました」

 それ、危険な代物だろ……。

 お前は、俺に、コタツは危険だと教えたいのか。

「つぐみ」
とそろそろかな、と思い、呼びかける。

「なにか呑むか」

 しばらくしゃべらせておいたので、喉が渇いた頃だろうと思い、そう言うと、つぐみは、えっ? と嬉しそうな顔をした。

 だが、すぐに、いやいや、ひっかかりませんよ~。

 このまま、酔わせて、うやむやにする気ですね~、という顔をする。

 心の中では笑いながら、
「珈琲を淹れてやろう」
と言うと、

 珈琲ですか……とあんな顔をしておきながら、実は呑みたかったのか、残念そうな顔をしていた。

 そして、
「この時間から飲んだら眠れなくなりませんかね~」
と今度は違う心配をし始める。

 いやいや、大丈夫だ、と腹の中で思いながら、奏汰はキッチンへと向かう。

 ウイスキー入りのアイリッシュコーヒーだからな――。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

好きになるには理由があります ~支社長室に神が舞い降りました~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 ある朝、クルーザーの中で目覚めた一宮深月(いちみや みつき)は、隣にイケメンだが、ちょっと苦手な支社長、飛鳥馬陽太(あすま ようた)が寝ていることに驚愕する。  大事な神事を控えていた巫女さん兼業OL 深月は思わず叫んでいた。 「神の怒りを買ってしまいます~っ」  みんなに深月の相手と認めてもらうため、神事で舞を舞うことになる陽太だったが――。  お神楽×オフィスラブ。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

侯爵様と私 ~上司とあやかしとソロキャンプはじめました~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 仕事でミスした萌子は落ち込み、カンテラを手に祖母の家の裏山をうろついていた。  ついてないときには、更についてないことが起こるもので、何故かあった落とし穴に落下。  意外と深かった穴から出られないでいると、突然現れた上司の田中総司にロープを投げられ、助けられる。 「あ、ありがとうございます」 と言い終わる前に無言で総司は立ち去ってしまい、月曜も知らんぷり。  あれは夢……?  それとも、現実?  毎週山に行かねばならない呪いにかかった男、田中総司と萌子のソロキャンプとヒュッゲな生活。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

こじらせ女子の恋愛事情

あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26) そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26) いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。 なんて自らまたこじらせる残念な私。 「俺はずっと好きだけど?」 「仁科の返事を待ってるんだよね」 宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。 これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。 ******************* この作品は、他のサイトにも掲載しています。

眠らせ森の恋

菱沼あゆ
キャラ文芸
 新米秘書の秋名つぐみは、あまり顔と名前を知られていないという、しょうもない理由により、社長、半田奏汰のニセの婚約者に仕立て上げられてしまう。  なんだかんだで奏汰と同居することになったつぐみは、襲われないよう、毎晩なんとかして、奏汰をさっさと眠らせようとするのだが――。  おうちBarと眠りと、恋の物語。

処理中です...