ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

菱沼あゆ

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スークと砂漠に行きました

いやまあ、ほんとうにそうなんですけど……

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 砂漠のツアーの日、真珠は楽しみで早くに目を覚ましてしまった。

 デザートサファリは砂漠に沈む美しい夕日を眺めるために、昼過ぎに出発するようだった。

 まだ時間があるな、と思った真珠は、ベッドの上に土産物を並べてみた。

 社食の仕事はもう辞めてしまったけど、みなさんにお礼を兼ねてお持ちしなければ、と買い集めた、カラフルなポーチや小皿、サンドボトルなどだ。

 本格的なスークは客引きがすごくて、ビビってしまい、あまり買えなかったので。

 あのあと、ショッピングモール内にあるスークなどでゆっくりと眺めて買った。

 お土産が溜まっていくたびに、帰る日が近づいてきている感じがする。

 なんだかちょっと寂しいな、と真珠は思った。

 いや、みんなに会いたいし。

 あの谷中の家も怪しい朝顔も懐かしいのだが。

 その谷中の家に持ち帰る予定のモザイクガラスのライトも並べてみた。

 気に入ったものを三個買ったのだ。

 ブルー系のと赤系のとオレンジ系の。

 その側にあの美しい装丁のアラビアンナイトの絵本を置いた。

 谷中の古民家に似合わないような、意外としっくりくるような……。

 真珠は天井から吊り下げたライトに照らし出された木造の狭い廊下を想像し、ちょっと微笑んだ。



 二時過ぎ、桔平もホテルに戻ってきた。

 一緒にエントランスで迎えの車を待つ。

「なんだその、探検隊みたいな格好は」
と桔平に言われ、

「いえ、砂漠で砂まみれになってもいいようにです」
と真珠は答える。

 何処の秘境の地に行くんですか、みたいな格好の真珠とは対照的に桔平は普通にラフな感じの服装だった。

 すぐに迎えの大きな4WDがやってきた。

 他のホテルで拾ってきたらしき人たちが乗っている。

 この車で一緒に旅するのは、スペイン人のご家族らしい。

 真珠たちがぺこりと頭を下げると、微笑み返してくれた。

 ツアーガイドの人が名前を呼んで確認する。

「アリサカ キッペイさん~。
 アリサカ マジュさん~」
と呼ばれ、思わず、返事をし損ねる。

 予約してくれたのは桔平だった。

 チラとその顔を見るが、桔平はこちらを見ない。

 まあ確かに、一応、ほんとは有坂真珠なんですけどね……と思いながら、真珠は車に乗り込んだ。

 
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