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先生、事件ですっ!
情緒あふれる(?)津和野に着きました
しおりを挟む「宇宙人に運ばれてきた人たちがたくさん居ますよ……」
やはりみんな違う道を通ってやってきたのか、ようやく到着した津和野は人と車でごった返してた。
「津和野の最大の問題は駐車場がほとんどないことなんですよね~」
と夏巳は呟く。
しかも、萩と一緒で昔ながらの城下町の道なので、狭くて走りにくいのだ。
とりあえず、ナビ様に導かれ、太鼓谷稲荷の駐車場へと向かう。
急で狭い道を上がると、またみっしりと車が居る。
「ツアー客も多いな。
何処も情緒がないじゃないか」
と言う桂に、
「いやあ、これが五時過ぎると一気に人が居なくなって、ものすごく情緒あふれるんですよ」
と夏巳は言った。
まあ、情緒あふれるというか、うら寂れた感じになるというか。
でも、先生が求めている雰囲気に近いのは、その五時過ぎの津和野の町だろうな、と夏巳は思う。
とりあえず、なんとか空いているスペースに車をとめる。
赤い鳥居が連なっている千本鳥居が美しいのだが、残念ながら反対側だ。
「下にとめて千本鳥居をくぐって歩いてくればよかったですね」
と夏巳は笑った。
雰囲気ある場所をぶっ飛ばして上の駐車場まで来てしまったので、自分たちこそがUFOで運ばれてきた感じだ、と夏巳は思う。
手水舎で手を洗ったあと、拝殿に向かい、階段を上がった。
「鳥居を潜ると聖域って感じがしますよね」
と夏巳は振り返り笑ったが、ツアーバスから降りてくる人々を凝視している桂の頭の中は二時間サスペンスに支配されているように見えて、
鳥居を潜っても、この人の心はなにも清らかにならないようだなと思っていた。
でもまあ、このまま、なにも事件が起こらず、萩の事務所がなくなって先生が居なくなっちゃったら、やっぱり、寂しい気がするし。
……帰ったら、祥華にサンタを逃してもらおうかな。
いや、もしかしたら、まだクルーザー止まってるかも、と思ったとき、桂のスマホが鳴った。
「もしもし?」
と桂が出ると、平川だった。
「先生っ、私、あれから考えたんですけど。
妻はもしかして、水曜日に私を殺そうとしてるんじゃないですかねっ?
私から自由になれると思って、ハートとかっ」
『死、ハート』とか、病んでますよね、奥さん……。
「平川さん、それはですね」
と桂が言いかけたが、
「あっ、妻が帰ってきましたっ」
と言って、平川は電話を切ってしまった。
いや……事の真相は奥さんに聞いたらいいんじゃないでしょうか。
たぶん、しょうもないことのような気がする、と思いながら、夏巳たちは、えっちらおっちら階段を上り、拝殿へと向かった。
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