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未来がわかるグッズ

何故、俺はまだ、ここに来てるんだろうな?

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「一円か。
 急に値段、ね上がったな」

 帰ろうと旧校舎を出た菜乃は、ちょうど会長と出会った。

「まあ、何銭とか言われても、払えませんしね。

 それより、ヒョウさん、最近、売るときの屁理屈が多いんですよね~。

 そのうち、バナナの叩き売りとか、ガマの油売りみたいに不思議な口上こうじょうをタラタラべながら、いろいろ売りつけてくるに違いないですよ」

「なんの話ー?」
とちょうどグラウンドを走ってきた涼太が足を止め、きいてくる。

 休んでいいのか? と思ったが。

 涼太は、
「こんなときこそ,あのタオルだよ~」
と笑っていた。

 だが、そもそも、タオルはスポーツバッグの中のようだった。

「ああっ、意味がないっ」

 涼太はバッグが置かれているベンチの方を振り返っていた。

「っていうか、そもそも、汗なら、すでにかいてんじゃん」
と言いながら、菜乃は涼太にも手帳とカレンダーの話をする。

「ああ、そういえば、書いてある手帳あるよな、大吉とか」

「大安だよ……」

「涼太、受験は大丈夫か……?」
と会長まで心配しはじめた。

 だが、大丈夫大丈夫、と涼太は笑っている。

「そろそろ勉強するよ。
 今日はもうクタクタだから、明日から」

「明日から本気出すってやつね」
と菜乃は苦笑いしたが、会長は、あくまでも大マジメに語ってくる。

「いや、涼太。
 『明日からの本気』より、『今、この瞬間の5分』の積み重ねが大事だぞ」

 うっ、と涼太と二人、胸をおさえる。

「ベンキョーしよう」

「そうね。
 帰って勉強しよう」

「明日から、5分やろっと」

「待って。
 それだと悪化してるわよ」

 明日から5分では、最初より、本気度が下がっている……。



 それじゃあ、と菜乃は帰宅し、涼太が部活に戻っていくのを会長は見送っていた。

 騒がしいやつらだな、と思いながら。

「おーい、貞盛さだもり
 お前、また塾行くのに、ここ、横切ってんのか」

 校舎前で花壇に水をまいていた教師が、そう声をかけてくる。

「すみませんー。
 ここ通ると、近いんでー」

 そもそもは、テストを探しに来ていたのだが。

 見つけても、成仏するなと(?)菜乃が言うので、塾を理由にまだここを通っていた。

 ヒミツの購買部に寄って帰るかな、と旧校舎を見上げたが。

 今日はもういいか、と思う。

 なんで、今日はもういいかなのか。

 自分でもよくわからないが……と菜乃が消えた方を振り返ったあと、会長はグラウンドを横切り、裏門に向かって歩いていった。


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