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未来がわかるグッズ

未来、そして、過去がわかる――

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 ええ~?
とうさんくさげに菜乃は声を上げる。

「未来って、わたしの未来ですか?」

「お前の未来でもあるし。
 人類の、というか、この地球の未来でもあるな」

 壮大そうだいだな、と思いながら菜乃は身を乗り出す。

 カウンターの上には、薄紫色の手帳があらわれていた。

 ん?
 これ、どこかで見たな、と菜乃は思う。

「人の過去もちょっとだけのぞける手帳だ」
 
「……あの、それ、化粧品屋さんでもらえるオマケの手帳じゃないですか?

 おかあさんも持ってるんですけど」

「ん?
 じゃあ、お前の親のか」
とヒョウは言うが。

 いや、お母さん、たしか今朝もその手帳、持ってたから、違うな、と菜乃は思う。

 そもそも、何万冊と配っているモノだろうから。

「見てもいいですか?」

 ああ、と言われ、菜乃は手にとる。

「やっぱり、今年の化粧品のオマケ手帳ですね。

 ……書きかけじゃないですか!」

 最初だけ、予定が細かい字で書いてあるが、3月くらいから書いてない。

 あまり見ても悪いかと思い、菜乃は手帳を閉じた。

「きっと4月はじまりの可愛い手帳でも買ったんでしょうね……」

 自分もよくやる。

 途中まで几帳面に書いているのだが。

 だんだん雑になっていって。

 仕切り直したいな~と思ったころに、文房具屋さんなどで、4月はじまりだの、10月はじまりだのという魅惑的な手帳を見つけ、書い直してしまうのだ。

 なので、同じ年のスケジュール帳が、2、3冊あったりする。

 完全に文具メーカーの罠にハマっているっ、と菜乃は思っていた。

「あの~、人の過去が覗ける、はわかりましたけど。
 人類の未来がわかるというのは?」

「その手帳を見れば、いつが人類にとって、良い日かわかるのだ」

 得意げにヒョウは言う。

 菜乃はなにも書かれていない後半の月をパラパラとめくって言った。

「……もしや、この小さく書いてある大安とか、仏滅とかの話では?」

「よくわかったな」
と笑ったあとで、ヒョウは、

「実は未来がわかるカレンダーも捨てられていた」
と言う。

 ヒョウがカウンターを叩くと、雑誌のフロクらしい、花の写真の壁かけカレンダーが出てきた。

 だが、大安とかの表記はない。

「書いてないじゃないですか」
と菜乃が言うと、

「書いてあるだろ」

 トントンとヒョウはカレンダーを叩いて言う。

「何日が何曜日かわかるじゃないか」

「……そんなのでいいのなら。
 クラスの小さな黒板には、いつも明日の予言がしてありますよ。

 国数体体英とか」
と明日の時間割のことを言うと、ヒョウは笑った。

「さあ、二点セットで一円だ。
 未来がわかる手帳とカレンダー、どうだ?」

 ヒミツの購買部じゃなくて、屁理屈へりくつを言って売りつけようとする購買部になっている……、
と思いながら、菜乃は言った。

「いりません……」


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