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おまけ

どんな人でもご利用できます その3

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「それで、そのあと、何度、みんなで数えても、12段だったんだよー」

 放課後、涼太は、やってきた菜乃に昼休みのできごとを語ってみた。

 愛らしい顔をして、けっこう辛辣しんらつなことを言う菜乃は、
「そもそも、14段とか多すぎでしょ。
 数え間違えたんじゃないの?」
と言う。

 そのとき、上の階から、

「いや、階段がほんとに増えてたのかもしれないぞ」
と言いながら、会長がやってきた。

「いや、どうやって増えるんですか?」
と言う菜乃に会長は小首をかしげたあとで、

「……なにか白いモノが階段に落ちてて。
 段数が増えてたとか」
と無茶を言う。

「白いモノ?」

「……豆腐とか?」

「いや、豆腐どこから来たんだよ」
と涼太が菜乃と揉めていると、会長は真顔で言った。

「豆腐を落としてくあやかし……。
 豆腐小僧か?」

 今まで『イケメンでスポーツ万能で、人望ある司さん』を尊敬していたのだが。

 菜乃といると、この人の妙なところが際立つな、と涼太は思っていた。

 菜乃が振り向き、涼太にきいてくる。

「そういえば、涼太。
 ヒョウさんから買った電話番号に電話かけてみたの?」

「いや、まだ」

「貸してやろうか?」
と会長は涼太にスマホを渡しかけたが。

 ヒョウがなにか言ったらしく。

 会長は、すすっ、とスマホを戻してしまった。

 ヒョウの声が聞こえない自分に、菜乃が説明してくれる。

「その番号にかけると、いつも事件に巻き込まれるんだって。
 だから、ヤクザの事務所とか、なにかの地下組織の電話番号じゃないかって」

 も~。
 警察にでも持ってってくださいよ、その番号~、
と菜乃はヒョウに文句を言っている。

 ヤクザの事務所か、なにかの地下組織の電話番号か。

 いや、それがいらなくなった人って何者なんだ。

 スパイとか?
と涼太が妄想していると、菜乃がヒョウからのメッセージを伝えてきた。

「涼太。
 ヒョウさんが、10円は多すぎるから、もうひとつ、なにかいるものはないかって。

『他のひとが映るカガミ』か、『拭くほど汗をかくタオル』か、『壊れてる懐中電灯』だったら、どれがいい? って」

「……ほんとうに、いらないモノしか売ってないな」
と涼太がつぶやくと、ふたりが笑う。

 旧校舎の地下には、あやかしたちが住んでいる彼らは言う。

 自分には見えないけれど。

 このふたりがいるというなら、いるんだろう。

 なんとなく、そう信じられるから――。

 どうしても、なにかやる、と言っているらしいヒョウに、
「じゃあ、『拭くほど汗をかくタオル』で」
と言うと、菜乃が、

 ええっ?
 なにすんの、それ?
という顔をする。

 店主も店も見えないけれど。

 涼太ももう、立派にヒミツの購買部の常連になっていた――。


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