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見知らぬ客
はじめて聞くウワサ
しおりを挟む「会長、まだ、なんの情報もないよ」
ヒョウが会長に言う。
「そうですか。
いや、今日は覗いてみただけなんで」
会長は今来た廊下を振り返りながら言う。
「そういえば、この旧校舎のウワサ話を聞きましたよ」
「この購買部のことか?」
客が増えたら困るな、という口調でヒョウは言うが。
いや、いらないモノしか売ってない店があると聞いても。
そんなに、お客さん、来ないんじゃなかろうか?
そう菜乃は思っていた。
「いえ。
旧校舎の地下で4:44になると、なにかが起こると」
ははは、とヒョウは笑う。
「そんなウワサは聞いたことないな」
「そうですか。
あと30秒ですね」
と会長が腕時計を見る。
二人はなんとなく周囲を見回した。
知らないと言っている以上、ヒョウの近くではなにも起こらなさそうだと思ったからだ。
菜乃たちが見た廊下の突き当たりの方をヒョウも見る。
「そんな4:44になにかが起こるなんて……」
笑いながらヒョウがそう言ったとき。
その突き当たり付近にあったらしい扉が、バーンッと開き、ふんわりとした半袖のブラウスに赤い吊りスカートをはいた女の子が飛び出してきた。
壁の向こうに消えていく。
――なにかが起こってるっ!
会長とともに、身を乗り出し、見てしまった菜乃はヒョウを振り返りきいた。
「あそこ、なにがあるんです?」
「確かトイレだな」
と会長が言う。
「……やはり、そうですか。
今のトイレの花子さんですよね?
トイレから逃げ出したんですかね?
それは確かになにかが起こってますね……。
っていうか、ヒョウさん、知らなかったんですか?」
と菜乃がきくと、
「だって、ここから外に出て見たりしないし。
いつが4時44分かも知らないしな」
まるで、そこがあやかしの世界と人間の世界の境界だとでも言うように、ヒョウはカウンターを叩いて見せるが。
いや、今、こっち側で花子さんが走ってたんですけど、と菜乃は思う。
っていうか、この人、いつが4時44分なのか知らないと言っていたけど。
もしかして、いつが13日の金曜日なのかも知らないんじゃないのかな、とちょっと思った。
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