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ほんとうに崖っぷちです
さすがは王様だ
しおりを挟むこれからどうしようかとまだ迷っているアイリーンに、カロンが言う。
「そういえば、あの世とこの世を行き来できる洞穴があるらしいな。
ただ――」
と言いかけたとき、誰かの声がした。
「アイリーンッ」
まさかっ。
「陛下っ」
「アイリーンッ、助けに来たぞっ」
「どうやってですかっ?
陛下も呪われたのですかっ?」
「いや、もう呪う力はないとラナシュ王に言われて。
普通に伝説の洞穴を探して下りてきた」
あー、という顔をカロンがする。
「それはお前、助けに来るのなら、下りてこない方がよかったぞ」
「どうしてだ?」
とエルダーがカロンに問う。
すごいな、さすが王様。
冥府の渡し守に出会っても、普通に会話をしている……、
とアイリーンは妙なところで感心した。
「外から名を呼んでもらわねば出られないと聞いた気がする。
お前もここに下りてしまったら出られないのでは?」
と言うカロンにエルダーは、
「……早く言ってくれ」
と言う。
「言う前に来たんじゃないか」
「あのー、洞穴って、どこですか」
「こっちだ」
「どこにあるんだ、私にも見せてくれ」
川沿いを歩く自分たちにカロンの船がついてきた。
カロンは乗っていけ、と言ってくれたのだが。
「いや、乗ったら死にそうだから」
と二人、全力で断る。
しばらく歩いたところの川沿いに、絶壁があり、その前に巨大な岩があった。
「もしや、この向こうですか?
さすが王様ですね。
こんな岩をひとりで動かせるとか」
「……いや、褒めてもらったのに申し訳ないが。
実は崖の岩の間に隙間がある」
アイリーンは覗いてみた。
確かに、そこには狭い隙間があり、その向こうは薄暗い洞穴になっていた。
「これは……細くないと通れませんね」
「女性は通りにくいかもしれないな」
「胸もなにもないので通れます」
「……いや、単にドレスのことを言ったのだが」
「……このドレスはスリムタイプなので、大丈夫です」
自爆してしまった、と思ったそのとき、
「アイリーン様~っ。
王様~っ」
と岩の向こうから声がした。
メディナだ。
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