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眠らせ森の恋
ちょっと待って、状況がわからない
しおりを挟む「失礼しました」
と外に出ると、英里が仁王立ちで待っていた。
「やっぱりね」
と言う。
な、なにがですか? と下げてきた湯呑みを手につぐみは固まる。
「あんたの好きな男って、社長だったね」
いや、そういう言い方をされるのは、ちょっと抵抗があるんですけど、と思っていた。
「セーター、社長に戻しに行ったんでしょう?」
うっ。
罠でしたか……と思いながら、
「なんでわかったんですか」
と訊く。
「あんたを社長がいつも見てるからよ」
「私がじゃなくてですか?」
「最初はなにかやらかしそうだからかな、と思ってたんだけど。
そのうち、なんか微笑ましげに見てるなと気がついて」
「いや、全然微笑ましげじゃないですよ」
と遮るように、つぐみは言う。
英里はこちらを上目遣いに見、
「付き合ってるの?」
と訊いてくる。
「いやあ、どうなんですかね?」
と曖昧に答える。
誤摩化したわけではなく、よくわからなかったからだ。
一緒に住んでは居るのだが、付き合っているのかは謎だ。
「やだっ。
もしかして、この間言ってた料理って社長に作るんだったの?
言いなさいよっ」
だったら、もっと立派なサイトを紹介したのに、と言われる。
「宮廷料理みたいなのですか?」
と言って、
「莫迦じゃないの。
そんなの誰が家で作るのよ」
と言われてしまう。
「付き合ってるの?
つきまとってるの?
つきまとってるのなら、社長、セーター着ないか」
今日、明らかに着込み過ぎだったもんね、と言われる。
「キスくらいしたの?」
と訊かれ、
「いえ、そのようなことはまだ、その……あんまりしていないのですが」
と答えると、
「付き合ってもないのに、料理作ってあげてるの?」
と問われる。
「いえ、一緒に住んでいるので」
「……ちょっと待って。
よくわからないんだけど、状況が」
と言われ、いや、私もわからないんですけどね、と思っていた。
「すみません。
このことはご内密に」
では、と腰から忍者が消えるように逃げていった。
いや、本物の忍者がそのような消え方をするものなのか、会ったことがないので、わからないのだが……。
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