23 / 58
いろいろと迷走中です
今日はなにをやらかした?
しおりを挟む「どうした。
元気ないな」
つぐみが職場でデスクに着くと、斜め前の西和田がすぐにそう訊いてきた。
「いやー、今朝は大失態です」
「ほうほう。
なにをやらかしたんだ?」
「……なにウキウキしてるんですか。
なにも専務に報告するようなことなどないですよ」
と言うと、そんなことはわかってる、と言う。
「純粋な興味だ」
いや、そんなことに興味を持たないでください、と思いながらも、今朝の顛末を話すと、
「その計算間違いするソフトはいいな。
他所の会社にバラ撒くとか」
と言い出した。
「何処に食いついてんですか」
と小声で話していると、
「ちょっと、秋名さん」
と少し離れた位置から、英里に呼ばれる。
はーい、と立ち上がると、
「おっ。
給湯室に小局様から呼び出しか?」
と笑われた。
「なんですか。小局様って」
「上には上が居るから。
あれはまだ、小局くらいだろ」
と西和田はボールペンの背で英里には見えないようにノートパソコンの陰から英里を差す。
「俺とコソコソ話してるから呼ばれたんだろ?」
「いや、わかってるのなら、話しかけないでくださいよ~」
と言いながら、怒られないうちに行こうと立ち上がる。
「もう~っ。
なんなのよ、あんたっ。
なにまた西和田さんとコソコソ話してるのよっ」
給湯室で、予想通りの文句を英里は言ってきた。
「いやー、叱られてたんですよー。
うらやましいなら、英里さんも叱られるようなことしたらいいじゃないですか」
と言って、あんた、莫迦じゃないのっ、と言われる。
「西和田さんに嫌われたら元も子もないでしょっ」
「そうですよ。
だから、私が西和田さんと話してても、別に好かれてるわけじゃないんだからいいじゃないですか」
「でも、あんたと居るとなんか楽しそうなのよ、西和田さん」
まあ、ある意味、楽しそうだな、と思う。
今日はなにやって、社長を困らせた? とか実に楽しげに訊いてくる。
最早、スパイうんぬんは関係なく、日々の楽しみとして訊いているような気がするのだが。
しょうがないなあ、もう、と溜息をつき、つぐみは言った。
「いや、実は私がその――」
思いついても、口に出すのは抵抗があったが、これ以上つつかれたくないので、口にする。
「つっ、付き合ってる人と西和田さんがお友だちなんですよ。
それでです……」
「ああ、そうなの」
と英里は言った。
「それでいろいろあるわけか。
でも、あんたの彼氏って誰なの?
この会社の人?」
と訊かれたが、しゃ、社長のことを付き合ってる人とか言ってしまいましたよ、と動揺していると、
「ちょっと訊いてる?」
と頬をひねられる。
いててててて、と思いながら、
「な、内緒ですっ」
と言うと、
「まあ、社内恋愛なら秘密にしといた方がいいわよ。
破局したとき、あいたたたってなるからね」
と言ってきた。
……何故、破局すると決めつけますか。
「でも、あんた、半年でもう彼氏見つけたの?
早いわよ。
彼氏の友だちのイケメン、誰か紹介しなさいよ」
「あれ?
西和田さんはどうしたんですか?」
「……上手く行かなかったときのためよ。
いや、そのパターンはあまり考えたくないんだけどね」
と苦い顔をして、英里は言う。
その顔を見ながら、少し笑い、
「可愛いですよね、英里さん」
と言って、
「だからなんで上から~っ?」
とまたひね切られた。
2
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜
春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!>
宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。
しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——?
「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜
ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。
イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。
8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。
※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる