5 / 79
とんだ不運のはじまりです ~ペペロミア・ジェイド~
今日こそ、お片づけしなければっ
しおりを挟むあ~、今日こそ、片付けなきゃな~と思いながら、葉名はマンションでひとり転がっていた。
入社して、このマンションに越してきた当初は、部屋も素敵な感じだったのだが。
慣れない職場で緊張しっぱなしなので、帰ったら寝るだけの生活が続き、気がついたら、部屋は荒れ放題。
休みの日に片付ければいいのだが。
一日はぐうたら寝ていて、もう一日は何処かに遊びに行っている。
リフレッシュも必要だよねーと言い訳しながら。
「葉名のマンション、会社の近くなんだよね?
従姉のおねえさんので広いんでしょ?
今度遊びに行かせてー」
と言う同期の子たちには、
「片付いたらねー」
と返しているが、このままでは、片付きそうにもない。
ああ、なんとかしなければ……と思いながらも、お笑い番組を見つつ、クッションを抱いてソファに転がっていると、いきなり、ピンポン、とチャイムが鳴った。
えっ? 誰っ? こんな時間にっ。
まさか、陽ちゃんが、彼氏と別れたから、部屋返せって言ってきたとかっ?
と思いながら、起き上がる。
誰も居ませんよ~と心の中で既に居留守を使いながら、そうっとインターフォンを覗くと、そこには玄関ロビーに居る悪王子が映し出されていた。
「開けろ、翡翠の女。
そこに居ることはわかってるんだ」
ロビーに響く、低めのいい声で准は言ってくる。
刑事かっ。
ていうか、翡翠の女ってなんだっ?
ミステリー小説のタイトルかっ?
そう呼ばれたら、なにか事件でも起こさねばならない感じがしてくるではないか、と思いながら、葉名は返答しないまま、息をひそめて、インターフォンの画面を見つめていた。
すると、准は低い声を更に低くして言ってくる。
「宅配便だ。
開けろ」
そんな高圧的な宅配業者の人は居ません……と思いながら、黙っていると、今度は、
「ピザ屋です。
開けろ」
と言い出した。
いや、『です』の次が、『開けろ』はおかしいが……と思いながら、まだ黙っていると、
「……早く開けなければ、管理人を呼ぶぞ。
『私、308号室の住人の婚約者で東雲と申しますが。
先ほど、外から確認したら、部屋に明かりがついていて、人影もあったのに応答がありません。
中で倒れているのかもしれないので、開けてください』
とか言って――」
と言いかけた准は、なにかに気づいたように横を向くと、
「あ、管理人さんですか?」
と声を張り上げ、話し始めた。
ひーっ。
「あっ、開けますからっ。
やめてくださいっ」
と叫び、葉名はうっかり解錠してしまった。
2
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
OL 万千湖さんのささやかなる野望
菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。
ところが、見合い当日。
息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。
「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」
万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。
部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる