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とんだ不運のはじまりです ~ペペロミア・ジェイド~

今日こそ、お片づけしなければっ

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 あ~、今日こそ、片付けなきゃな~と思いながら、葉名はなはマンションでひとり転がっていた。

 入社して、このマンションに越してきた当初は、部屋も素敵な感じだったのだが。

 慣れない職場で緊張しっぱなしなので、帰ったら寝るだけの生活が続き、気がついたら、部屋は荒れ放題。

 休みの日に片付ければいいのだが。

 一日はぐうたら寝ていて、もう一日は何処かに遊びに行っている。

 リフレッシュも必要だよねーと言い訳しながら。

「葉名のマンション、会社の近くなんだよね?
 従姉のおねえさんので広いんでしょ?

 今度遊びに行かせてー」
と言う同期の子たちには、

「片付いたらねー」
と返しているが、このままでは、片付きそうにもない。

 ああ、なんとかしなければ……と思いながらも、お笑い番組を見つつ、クッションを抱いてソファに転がっていると、いきなり、ピンポン、とチャイムが鳴った。

 えっ? 誰っ? こんな時間にっ。

 まさか、ようちゃんが、彼氏と別れたから、部屋返せって言ってきたとかっ?
と思いながら、起き上がる。

 誰も居ませんよ~と心の中で既に居留守を使いながら、そうっとインターフォンを覗くと、そこには玄関ロビーに居る悪王子が映し出されていた。

「開けろ、翡翠ひすいの女。
 そこに居ることはわかってるんだ」

 ロビーに響く、低めのいい声でじゅんは言ってくる。

 刑事かっ。
 ていうか、翡翠の女ってなんだっ?

 ミステリー小説のタイトルかっ?

 そう呼ばれたら、なにか事件でも起こさねばならない感じがしてくるではないか、と思いながら、葉名は返答しないまま、息をひそめて、インターフォンの画面を見つめていた。

 すると、准は低い声を更に低くして言ってくる。

「宅配便だ。
 開けろ」

 そんな高圧的な宅配業者の人は居ません……と思いながら、黙っていると、今度は、

「ピザ屋です。
 開けろ」
と言い出した。

 いや、『です』の次が、『開けろ』はおかしいが……と思いながら、まだ黙っていると、

「……早く開けなければ、管理人を呼ぶぞ。

『私、308号室の住人の婚約者で東雲しののめと申しますが。

 先ほど、外から確認したら、部屋に明かりがついていて、人影もあったのに応答がありません。

 中で倒れているのかもしれないので、開けてください』
とか言って――」
と言いかけた准は、なにかに気づいたように横を向くと、

「あ、管理人さんですか?」
と声を張り上げ、話し始めた。

 ひーっ。

「あっ、開けますからっ。
 やめてくださいっ」
と叫び、葉名はうっかり解錠してしまった。



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