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第五章 あやかしビールと簡易ふわふわケーキ

昨日のあれはなんですか

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 翌日、鷹子は晴明に訊いてみた。

「昨日の夜、凄い炎が陰陽寮の方で上がって、一瞬で消えたって聞いたんだけど。

 怯えた人たちが陰陽師たちに訊いたら、あれは護摩を焚いた炎ですと言われたって。

 そんな護摩ある?」

「ああ、あれは青龍に火を吹かせたのです」
と晴明は軽く言う。

「……なんで?」

「昨日のあやかしが人を襲おうとしたので」

「焼いちゃったの?」

「大丈夫です。
 七回焼かないと死なないあやかしなんで」

 動きを止めただけです、と晴明は言う。

「……ナナカマドみたいね」

 ナナカマドは燃えにくく、七日間、かまどに入れていても、燃え残ると言われている。

 まあ、実際燃やしてみると、よく燃えるらしいのだが。

「でも、助かったのならよかったわ。
 可哀想じゃない。

 せっかくカラハナソウ持ってきてくれたのに、殺してしまったら」

 まあ、そうですね、と言う晴明に、

「まだまだ使えそうなあやかしだしね。
 ちゃんと生かしておいてね」
と言って、

「あなた、鬼ですか」

 鬼より鬼ですね、と言われてしまう。

「もしかして、あれ、鬼だったの?」

 ツノは晴明にへし折られたのだろうか。

 なかったが。

 そういえば、虎柄の鬼のパンツもなかったな。

 晴明に剥ぎ取られたのかな。

 なんか毛皮のベストみたいなのは着てたけど。

「ビールできたら、呑ませてあげたいわ」

「……また暴走しそうなのでやめてください」

 酔っ払った鬼とか始末に悪い、と言われたが。

 大江山の、最強の鬼、酒呑童子は酒にやられて殺されたんだったような。

 いや、あのあやかしを殺したいわけではないのだが……。


 その話を中宮、寿子にすると、

「ほう、鬼か。
 面白いな。

 妾が飼おうか」
と脇息に寄りかかったまま、ちょっと楽しそうに笑っていた。

「また、ややこしくなりそうなことを……」
と鷹子がもらすと、

「ちょうど、そのようなものが欲しいと思うておったのだ」
と寿子は言い出す。

 そのようなものとは、どのようなものですか。
 そして、なににするんですか、と思いながら、鷹子は言った。

「ちゃんと陰陽寮で面倒見るので大丈夫ですよ」

 ちゃんと面倒見るので、おかしなことはしないでくださいね、という意味だ。

「とりあえず、あのあやかしには、なにか甘いものでもあげておきますよ。
 ご機嫌取りに」

 そう言い、鷹子は笑う。

 ちょうど作りたいものがあったからだ。

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