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第二章 姿なき中宮
異世界から来たんです
しおりを挟む鷹子は命婦に人払いしてもらい、晴明に自分の前世らしきものを語った。
「ほう。
異世界から。
まあ、そう言ったこともあるやもしれませんね」
さすが陰陽師、理解が早い、と思った鷹子だったが、晴明は小首を傾げるようにして言ってくる。
「まあ、私は超常現象というものには懐疑的なのですけどね」
……なんだって?
「いえ、魑魅魍魎や霊や式神は信じておりますよ。
この目に見えてますからね」
人はそれを超常現象というのでは……と鷹子は思っていたが、晴明は、
「疑って疑って、疑い抜いて納得でき。
なおかつ、自分でも操れるようになったモノや力だけ信じるようにしております」
と語る。
そ、そうなのですか。
まあ、陰陽寮って本来、そういう科学的な場所だしな、と鷹子は思った。
自分たちの世界でも、天文学者みたいな側面もあったようだし。
「なにもかも一度、疑うことです。
霊の存在も神の存在も。
その方が強固な信仰となるでしょう」
いやあの、神様はその辺、ウロウロしてるんですけどね、疑わなくとも……。
晴明に見られてるな、と思いながらも、鷹子はつい、横目に後ろを窺ってしまう。
「あなたのおっしゃる異世界の前世というものが、私の中にも存在しているのか。
とりあえず、疑い尽くしてみます」
その鋭い眼光に、私の前世まで一緒に疑われそうだ、と鷹子は怯える。
でも、そういえば、なんでも疑う人なのに。
姿なき中宮様の存在は疑ってみないのだろうかと鷹子は思った。
「なんですか?」
とその視線に気づいた晴明に問われ、
「いえ、晴明は中宮様にお会いしたことはあるのですか?
私は伊勢に行く前も戻ってからもないのですが」
と答える。
「ないですね」
あっさり晴明は言った。
「中宮様のお住まいの辺りで、人の気配がしたことがないです。
ですが、居るとみなが言うから、居るのでしょう、あそこに。
……なにかが」
なにかがっ? と鷹子と払われたフリをして背後で控えていた命婦が身を乗り出す。
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