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じゃあ、貴方が犯人です
何故、こんなことに……
しおりを挟むそもそも貴方が言ったんですよね、と夏巳は思う。
奥さんたちが食事をされた店から、此処まで40分かかると。
なんとかして、事件を解決したいあまりに、動転しているようだ。
っていうか、依頼もないのに、解決したところで、なんの実績にもならないような。
口コミの宣伝効果くらいはあるかもしれないが。
事件解決のために、夫婦仲を崩壊させては、いい宣伝はしてもらえそうにないですけどね、と思ったとき、また、苦しまぎれに桂がわからないことを言い出した。
……本当に。
いっそ、この人が犯人なんじゃないかと思うくらい苦しまぎれな発言が多い。
「わかった。
きっと、奥さんが山口市でアリバイを作っている間に、共犯者がご主人を殺そうとしたんだ」
「誰なんですか、共犯者って……」
ふと見れば、少し飽きてきたのか、父親と小笠原は、皿に残ったアジを見ながら、どの辺でなにが釣れるとか、今度、浜中さんが船を出すと言っていたとか、釣りの話をし始めている。
そういえば、この人たち、仕事中だったんじゃないのか、と夏巳が思ったとき、桂が言ってきた。
「共犯者といえば、愛人に決まってるだろう。
だって、奥さん、美人じゃないか」
さらっとそんなことを言う桂に、まあ、と奥さんは嬉しそうだ。
この人、口説こうというつもりもなく言うのが怖いな。
……女性につけ狙われたりしないのだろうか、と思いながら、夏巳は桂と平川の妻を眺めていた。
話の中で、桂と夏巳に、何度も撲殺された平川は、ぼんやりと揉めている二人の話を聞いていた。
何故、こんなことに……と思う。
道でうちの生徒と居た、よくわからないイケメンと話したら、いつの間にか、妻に愛人が居る話になっていた。
……だが、今まで一度もそれを疑わなかったわけではない。
常々思っていたからだ。
うちの美しい妻は、本当に、このうだつの上がらない自分で満足してくれているのだろうかと。
口に出して言えば、この品川という刑事辺りに、ちょっと来い、のろけるな、と言われそうな話ではあったが。
もしや、俺は妻とその愛人に殺されそうになっているのかっ?
平川もまた、桂の洗脳にはまっていた。
そういえば、なんだか、頭に映像が浮かぶ。
ビール瓶で誰かが殴られている映像だ。
あれが俺かっ!
もう冷えてはいないビール瓶をつかみ、振り下ろす映像がはっきり見えた。
「先生っ!」
と今まで厄介な人だと思っていた探偵を呼ぶ。
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