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私の後宮に入れてやろう

裏切り者っ

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 次の日、アローナとアハトはちょっとした手土産とともに、レオのいる離宮を訪ねていた。

「結構な豪邸ですね。
 ジン様は、なんだかんだでお父様に甘いですね。

 何故、石牢とかに入れないのでしょう」

 アラベスク模様のタイルと透かし彫りが随所に散りばめられた美しい宮殿の中を見回しながら、アローナが呟くと、

「私は誰よりあなたが恐ろしいです……」
と青ざめ、アハトが言ってくる。




 一応、知らせは出していたので、すぐに迎えの衛士たちにより、謁見の間に通された。

 そこには、ジンが座る玉座ほどは大きくも高くもないが、それに類似したものがあった。

 そこに腰掛けるレオを見て、まだまだ王様ですよね、と苦笑いしながら、アローナは運ばせた手土産をレオに見せた。

「どうぞ、レオ様。
 ジン様と奪い合って勝ち取ってきた菓子です」
と言うと、アッサンドラから連れてきた若い侍女が菓子の入った銀の箱を手に前に進み出る。

 玉座の肘掛けで頬杖をつくレオは、
「なんだかものすごく価値がありそうに聞こえるが……。

 ただの焼き菓子だろう。
 お前は口が上手いな」
と言ってきた。

「それと」
とアローナは振り返り、並んだ大きな陶器の酒壺を手で示して言う。

「兄が置いていった酒です」

「……五つしかないようだが。
 中に美女でも入っているのか」

 いや、酒樽千個なんて我々には用意できませんからね、とアローナが思っていると、
「では、今から入れましょう」
と言いながら、アハトがアローナの腕をつかんできた。

「アハト様っ。
 この間、あなたは正妃になられる方だから大事に扱わないとって言いましたよ~っ」

 ひーっ、と怯えてアローナは叫ぶ。

 レオに気に入られるためなら、本当にやりそうだと思ったのだ。

 案の定、アハトは、しれっとした顔で言ってくる。

「正妃様なら、その身をていして、この場をなんとかしてくださいっ。
 そもそも、あなたはレオ様のしとねにはべるために、貢ぎ物としてこの国に来られたんでしょうが」

 じゃあ、いいでしょうっ、
となにもよくないことを言ってくる。

「ひーっ。
 裏切り者ーっ」

「そもそも結託してませんっ」
と揉めるふたりを眺めながら、レオは毒見係も通さずに、焼き菓子を口にし、うん、美味い、と呟いていた。


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