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隠し神
どうして、そう思った……?
しおりを挟む穴蔵屋の使いの者がやってきた。
ぱっと見、普通の商家の手代かなにかのように見える男たちだった。
向こうは自分たちが持っていくと言ってきたが、左衛門は断った。
「その穴蔵を見せて欲しい。
そうでなければ信じられない。
お前たちが持ち逃げするかもしれないじゃないか」
と左衛門は言った。
使いの者たちは、面倒臭い客だな、という顔をしていたが。
相手が金に汚い楼主だとわかっているので、まあ、そんなものか、と納得したようだった。
「では、丑の刻に、お連れてしましょう。
その代わり、目隠しはさせてもらいますぞ」
「いいだろう」
と頷く左衛門に、男たちが問う。
「まさか、楼主様自ら行かれるのですか?
信用のおける若い者でも寄越してください」
「何故、私ではいけないのだ」
いや、このごうつくばりな楼主を目隠しして連れ出して。
怪我でもさせたら、逆に金をふんだくられそうだからではないだろうか……と横に立って見ながら、那津は思っていた。
困った男たちは、那津をチラと見、
「では、そこの用心棒の方でどうですか」
と言ってきた。
……何故、俺を用心棒だと思った、と思ったとき、左衛門が言った。
「わかった。
この用心棒と私でどうだ。
私に何事もないよう、この用心棒が守る。
お前たちに手間はかけさせない」
……粘るな、左衛門。
何故だ……。
というか、何故、俺がお前の用心棒なんだ……と思ったが、それで話がまとまってしまった。
男たちも面倒臭くなったのだろう。
奴らが帰ったあと、隠れて聞いていた咲夜が、
「いいなあ。
私も行きたい……」
と子どもがぐずるように何度も言ってくる。
昔のお前ならともかく、今のお前は無理に決まってる、と思いながら、那津は頭が重そうな感じに着飾っている咲夜を見た。
「おい、咲夜。
今日の客はどんな爺さんだ」
「今日は巳波屋の若旦那よ。
……だから、きっと途中で帰ると思うわ。
いっそ、客が居てくれた方がまだマシなんだけど」
と言って、行ってしまった。
左衛門を見ると、左衛門は視線をそらしてしまった。
那津は溜息をつき、階段を上がっていく咲夜を見送る。
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