あまりさんののっぴきならない事情 おまけ ~海里のろくでもない日常~

菱沼あゆ

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海里のろくでもない日常

愛よね

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 いよいよ、金曜日だ。

 あまりはもう出発するときの格好で、お昼に海里にパンを配達していた。

 今日は、噛むとすごく味わいのあるプレーンなパンと、チェダーチーズと紫キャベツとビーフのサンド。

 それに、トマトたっぷりのミネストローネだ。

 ……もちろん、自分で作ったのではない。

 持っていく途中で、秋月と出くわした。

 見せて見せてと言われ、配達用のピクニック風バスケットの中を見せると、秋月が覗き込む。

「今日も美味しそうね」
と言う秋月に、

「トマトたっぷりのミネストローネは血糖値も血圧も下げてくれるんですよ」
と笑って言って、

「支社長、糖尿病で高血圧だっけ?」
と訊かれてしまった。

「いえ、違いますけど」
と苦笑いして言うと、

「そうか。
 愛よね、愛。

 いつまでも長生きしてねってことね。

 ねえ、なんで結婚しないの?」
と秋月が訊いてくる。

 いや……なんでなんでしょうね。

 なんだか年がら年中、愛を囁くついでのようにプロポーズしてくるので、何処で返事をしていいのか、わからなくなっているだけなんですが……。

「お昼、ご希望でしたら、一緒に配達しますよ。
 朝までにお電話いただければ」

「あら、そうなの?
 何人分まで大丈夫?」
と詳しく訊いてくる秋月と話していると、桜田が現れた。

「あまりさん、今日はそれで行くんですか?」
と落ち着いた桜色のワンピースを着たあまりに訊いてくる。

「一応、そうしようかなと思って」
と言うと、

「あまりさんって、いつも女子力高い服が多いですよね」
と笑う。

 いや、これは大崎さんの見立てだし。

 男なのに、女子力高いからな、あの人……と思っていると、後ろから、海里の声がした。

「服の女子力が高いだけで、あまりが高いわけじゃないからな」

 ははは、と秋月と、服も中身も女子力の高い桜田が笑う。

 いいですよ。
 怒りませんよ。

 今日は楽しい旅行ですからね~と思いながらも、ちょっと膨れて、
「はい」
と海里にバスケットを突き出したが、海里は何故か笑っていた。


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