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終章 帰り道
それぞれの真相1
しおりを挟む「……貴方、誰か殺しましたか?」
「貴方は、もう全部わかってそう。
私が別荘に火をつけて、それですべて終わりのはずだった。
だけど、森から燃える建物を見てるとき、あの子に出会って。
なんでかしらね。
そのとき、あの子に気づかれたとわかったのよ。
あの子も殺したいほど、誰かを憎んでいたからかもしれないわ」
「ご両親を殺したのは貴方だったんですね」
「ちょっと限界なほど口うるさくてね。
殺したあと、後悔しなかったって言ったら嘘になるわ。
だから、自分も殺してしまおうと思った」
でも、あの子に出会ったから、とあづさは言う。
殺人を犯した自分を誰よりも疎んでいたのは、佐野あづさ本人だったようだ。
自分だったら、どうかな、と思う。
似ていると思ったけれど、彼女の方が幾分、マシかもしれない。
「だけど、奏は本当に御剣衛を好きになったみたいで。
前の住人が置いていた毒薬を見つけたとか言い出したの。
冗談じゃないわ。
また佐野あづさが人を殺す。
だから、やめるよう言ったのに、あの男をも殺してしまった。
だから、あんたがやめなきゃ、教会ごと爆破するって言ったの。
脅しのつもりだったから、爆弾、解除する方法は教えておいたのに」
『わかったわ。
だからね、おねえちゃんがこれ着て出てって、時間を稼いで。
その間に私、姿を消すから』
じゃあね、手を振った奏の顔が頭に浮かぶ。
私は奏を信じて、あの場を離れるべきではなかった。
あのとき、あの子は側にあった二つの花籠を見ていたのに。
八代に奏が不穏なことを考えているようだと聞かされ、私は教会に彼女を止めに行った。
奏は私が生きていたのなら、復讐はもうやめるから、自分が居なくなるまで、時間を稼いでくれと言った。
八代は奏が男を殺したことを私には教えなかったし、奏が早くから私が生きていることを知っていたことも教えなかった。
だから、私はその言葉を信じてしまった。
私は祭壇の間の前に立ち、じっとしていた。
この先にいずれ現れるのだろう、衛のことを考えながら。
確か、あのとき、ぼんやり思っていた。
でも、この格好で、今更、衛の前には立てないな、と。
そのとき、花屋の店員が戻ってきた。
通用口から、廊下の真ん中に現れた彼女は、北側の端に居た自分には気づかず、控え室に向かい、走っていった。
「すみせーん。
あの、先程、サイン……」
地響きのような音がした。
「……俺のせいだ」
そう呟いたのは、八代だった。
「俺がお前に、すべてを話していれば」
「先生」
と私は八代を見上げる。
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