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祈り
おとぎ、スイカを買う
しおりを挟む「どうする? コンビニに行くか?」
じわじわと蝉の鳴き声が聞こえはじめる季節。
おとぎが現れた通路の社のあたりからも、蝉の声がもれ聞こえていた。
あの木に蝉がたくさんついているのかもしれない。
途中、商店街を通る。
おとぎは物珍しげに、八百屋の店先をながめていた。
「しま模様のスイカがあるっ。
珍しいなっ」
「いや、しま模様じゃない方が珍しいんだが……」
「江戸時代は黒いスイカが多かったんじゃないか?」
とメガネが言う。
「そうじゃ、スイカは黒い。
そして、あまりあまくないのじゃ」
「お嬢ちゃん、これはあまいよ~」
しゃがんで大きな丸いスイカを吟味しているおとぎに八百屋のおじさんが笑って言う。
「スイカは砂糖をかけねば、あまくないのじゃ」
「砂糖かけるのか?」
「塩なら聞いたことあるよ。
甘くなるっておばあちゃんが言ってた」
と菜々子が言った。
「お金持ちは、スイカに砂糖をかけて食べるのじゃ」
おとぎはどうも、このしましま模様のスイカが気になるらしい。
「じゃあ、スイカにしようか。
スイカ、熱中症にもいいって言うしな」
渉はスイカを買い、おじさんが網に入れてくれ、メガネがそれを左肩に背負った。
「そうやってお前が持ってると、ボールみたいだな」
と言うと、メガネは渋い顔をする。
……そういえば、こいつ、ガタイがいいだけで、運動できないんだったな、と思い出す。
「せっかくだから、スイカ割りでもしたら?」
四人でスイカを持って帰ると、穂乃果がそんなことを言ってきた。
庭にスイカ割りの準備をしながら、メガネが言う。
「そもそも、スイカ割りとは、中国で生きた人間を砂に埋め、頭を叩き割るという儀式が……」
「――黙れ」
みんなで叩いて、なんとかスイカは割れた。
ウッドデッキに座って食べる。
「うん、あまい! しましまのスイカは、砂糖をかけなくても、あまいんだな」
とおとぎは感心していた。
渉はそんなおとぎの言葉を聞きながら、ちょっと小首を傾げる。
「でも、平安時代の鳥獣戯画にも、しましまのスイカ持ってるウサギが描かれてるよな」
鳥獣戯画とは、動物を人間っぽく描いている、日本最古の漫画だ。
まあ、あれを漫画だとか言われても、今の子どもたちには、ピンと来ないだろうが。
「スイカじゃなくて、スイカっぽい、なにかなんじゃない?」
「スイカっぽいなにかってなに?」
と話す菜々子とメガネとを見て、おとぎたちも笑っていた。
みんなで部屋に戻ると、つけっぱなしだったテレビで、ドラマの再放送をやっていた。
「お、この間、お腹空かせてた人が出てるぞ」
とおとぎが言う。
穂乃果のケータリングにケチをつけていた玲花が出ていた。
「芝居、上手いな。
頑張っておるんじゃな」
と微笑むおとぎの言葉に、
「……そうだな」
と渉は頷く。
まあ、困った人だが、この人も大変なんだろうな、とリアルとは全然違う表情で、颯爽と刑事の役をやっている玲花を眺める。
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