72 / 95
第三章 禁断のプロポーズ
証拠を見つけるためですかね?
しおりを挟む「待て。
お前が五十万当てたこと、誰が知ってるんだ。
第一、五十万当たったと聞いて、わざわざ入る奴、いるか?
気が大きくなって、一瞬で使ってるかもしれないのに」
ま、ありがちだな、とは思う。
私も智久さんに返したいというのがなかったら、調子に乗って喋りまくって、みんなにおごって、大赤字になっていたことだろう。
「でも、桜さんは当たったってバレたら、誰かに家に火をつけられるかもとか言ってましたよ」
「……愉快な奴だな、平山は」
そういえば、その五十万どうした、と言われ、
「もう全額はないんですけど。
返せたら、智久さんに返したかったんで、しつこく持ってってみました。
だから、今、鞄に」
と智久の家に持っていった鞄を叩いてみせる。
「お前の部屋を荒らしている途中で帰ったんだよな、犯人。
俺が戻ってきたからかもしれないが、お前の鞄を見て、なかったから帰ったとか」
「五十万がですか?」
夏目は渋い顔をする。
言いながら、まったくその説は信じてはいないようだった。
「やっぱり、日記を見つけたから、帰ったんだろうな」
「……鞄を引っ繰り返してたんですよね?」
「鞄が引っ繰り返されてて、箪笥の引き出しが幾つか開けられてたな」
「引き出しは、全部じゃなかったんですか?
じゃあ、箪笥を探した方が後だったんでしょうか。
おねえちゃんの日記は鞄にありました。
見つけてもなお、なにかを探してたってことですか?
それか、引き出し開けてる途中で、鞄に気がついて、そっちを見たか」
「金盗るついでに興味本意で持ってったのかもしれないな。
なにかまずいことが書いてあれば、脅して、金盗れるかもしれないし」
「空き巣がそんな危険なことしますかね~?」
「更に探してたって言っても、お前の部屋に他に狙われるようなもの、ないだろう」
決めつけたような口調で言うので、つい、
「あるかもしれませんよ」
と言ってしまう。
「なんだ?」
「……えーと、日記ですよ」
「日記?」
「私の日記ですっ」
と威張ったように言うと、阿呆か、と言われる。
「どうせ、くだらないことしか書いてないんだろ」
と流された。
「でも、智久さんは、お前の日記を読み返してみろとか言ってましたよ」
と対抗するように言ってみた。
「なんのために?」
と問われ、
「……おねえちゃんが貴方と浮気してた証拠を見つけるためでしたっけね?」
夏目に怪しい行動がないか、読み返してみろと言われたのだった。
「あいつと浮気してたのは、水沢だろう」
「そうなんですよね。
でも、あれ、気持ち的には、浮気ってほどでもない感じでしたが」
智久が言っているのは、克己のことなのだろうか。
そう思ったとき、中から鑑識さんが呼びかけてくる。
「終わりましたよ。
どうぞー」
ようやく、ほっとして、中へと上がった。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
濃厚接触、したい
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
とうとう我が社でもテレワークがはじまったのはいいんだけど。
いつも無表情、きっと表情筋を前世に忘れてきた課長が。
課長がー!!
このギャップ萌え、どうしてくれよう……?
******
2020/04/30 公開
******
表紙画像 Photo by Henry & Co. on Unsplash
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
甘い失恋
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私は今日、2年間務めた派遣先の会社の契約を終えた。
重い荷物を抱えエレベーターを待っていたら、上司の梅原課長が持ってくれた。
ふたりっきりのエレベター、彼の後ろ姿を見ながらふと思う。
ああ、私は――。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる