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そこになにがあるかわからないけど、行ってみますっ!

いや、何故なんですか

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 全員で上に上がる途中で、数志が、
「あ、鍵」
と言って、地下室の隅で小さな鍵を拾っていた。

 征が投げ捨てた鍵のようだ。

「今更いらんだろうが」
と言って、尊は、それも父親に返していた。

 本当は最初から数志さん、見つけてたのかもしれないな、と鈴は思う。

 さっき、お義父様が言っていたように、もしかしたら、数志さんも、征さんに、とことんまでやらせた方がスッキリすると思って――。

 そんなことを考えながら、鈴たちが玄関ホールに出ると、そこでは、ボロボロの窪田が待っていた。

「窪田さん、どうしたんですかっ?」
と鈴が言うと、

「いやあ、どうもこうも……」
となにか言いかけた窪田だったが、正明を見て、言葉を呑み込む。

 その様子を見てか、自分の役目は終わったと思ってか。

「じゃあ、ごゆっくり」
と言って、正明は、この騒ぎをそのまま丸ごと置いて、行ってしまった。

 和音が客とともに、使用人も連れて戻ってきたようで。

 正明は通りかがったメイドに、酒を守衛室に持ってくるよう頼んでいた。

 ……また戻る気か、守衛室に。

 っていうか、この家の奥方様は、本当のところ、誰なんだ、と思う鈴の側で、数志が窪田に訊いていた。

「なにやってたんですか」

「いや……大変だったんだ」
と乱れた服装で窪田は言ってくる。

「おかしいな。
 お前に言われた通り、泉美様の部屋のあるフロアは外したのに、なんで、見つかったんだろうな?」

「さあ~」
と言って、数志は笑っていた。

 小首を捻る窪田の前で、数志がぼそりと呟いた。

「負の連鎖ですよね……」

 え、なにが? と鈴は数志を見る。

「窪田さんの彼女が、振り向きもしない征様のことを、あの実直そうで、一途に愛してくれそうな感じがいいとか言って出て行って、窪田さんが落ち込んで。

 そしたら、僕がいいなと思っていた子が そんな窪田さんが気になるとか言い出してっ。

 窪田さんに甲斐甲斐しく尽くし始めて、結局、窪田さんの餌食にっ。

 負の連鎖ですよっ!」
と最初のヒソヒソとした感じは何処へやら、数志はホールに響き渡るような大声で叫び始めた。

 まだ根に持ってたのか、という顔を窪田はしている。

 そんな窪田の横で、征が、
「誰だ、窪田の彼女って」
と言っていた。

 そもそも言い寄られていることにも気づいていなかったようだ。

 この人もなかなか鈍感だな、と思っていると、なんだかわからないが機嫌が直ったらしい和音たちが仲良く階段を下りてきて、

「あら、まだやってたの」

「なにやってるの」
とそっくり同じ顔、同じ声で言ってきた。

「征、もう諦めなさい。
 一度、尊の手垢がついたような女」

 うーん。
 これはどっちだったっけ?

 だんだんわからなくなってきたが、どちらにしても、ひどい言いようだ、と思っていると、もう片方も、

「そうよ。

 初めてあんたが本気で欲しがったものだから、与えてあげたかったけど。

 人の気持ちばかりはどうにもならないものなのよ」
と語ってくる。

 いや、だから、どっちが言ってるんですか……、と思いながらも、鈴は、ちょっと感謝もしていた。

 言葉は悪いのだが、どうやら、征に自分を諦めさせようとしてくれているようだった。

 それにしても……。



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