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放置もちょっと

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「まあ、食え」

 浜辺に下りてきた数志に尊がクロワッサンを差し出した。

「これも美味しいですよ」
と鈴もフルーツを差し出す。

「いやいや。
 歓待されても、連れて帰りますよ、鈴様」
と容赦なく数志は言ってくる。

 いや、いつの間にやら、レジャーシートに座り、クロワッサンも、しっかりその手につかんではいるのだが――。

「なかなか鈴様が見つからないから。
 食事が出ても、いつ征様の雷が落ちるかと気が気じゃなくて、食べた心地しなかったんですよね~」
と言いながら、数志はくつろぐ。

 そんな数志を窺うように見ながら、
「連れて帰るのは鈴だけでいいのか?」
と尊は訊いていた。

 自分を吊るし上げなくていいのかと思っているようだ。

「ああ、尊様に関しては、放っとけって感じでしたねー」

「それはそれで寂しいものがありますね~……」
と鈴は苦笑いする。

「俺たちが此処に居ること、もう征には報告したのか?」

「いや、まだです。
 今、見つけたばっかりなんで」

「こういうときは、まず先に報告しなきゃ駄目だろうが。
 俺たちに逃げられても、他の連中がすぐ動けるように」
と叱り始める尊に、

 貴方、一体、誰の味方なんですか……、と突っ込みたくなる。

「これ食べたら言いますよ」

 どっしりとしたクロワッサンを食べながら数志はそう言ってきた。

「……言うのか」

「貴方が今、言えと言ったんですよね~っ」

「一般論だ。
 仕事中はそう動けと言っただけだ。

 今、報告するな。
 俺のクロワッサンやったろう」

「俺も昔、尊さんに、駄菓子のゼリーあげましたよ」

 何十年前の話だっ、と尊はキレる。

「やれっ、鈴っ。
 お前、撲殺得意だろうがっ」
と言われ、鈴は、えーと、と周囲を見回し、水の入っていた濃いブルーの綺麗なボトルを、よいしょ、とつかんだ。

 だが、その瞬間、鈴は数志に腕をひねりあげられていた。

「いたたたた……」

「駄目ですよ、尊さん。
 この人、簡単にれますよ」

「殺るなよ、征の花嫁なんだろうが……」

 尊は、そう呆れたように数志に言っていた。


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