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いいえ、返品は受け付けません
徹底的に利用する気だ
しおりを挟む鈴たちは、かなり車で走り、お腹が限界に達したところで、持たせてもらった朝食を食べることにした。
「先に食べてていいと言ったのに」
と運転している尊は言うが。
「いえ、一緒に食べないと美味しくないですよ。
その先の砂浜で食べませんか?」
と鈴は誘う。
車はまた湾岸沿いに出ていた。
防波堤の向こうに綺麗な砂浜が見えている。
鈴は後部座席を見、
「日傘とレジャーシートまで載せてありますよ。
……アンケートつきで」
と言った。
レジャーシートの上に、ちゃっかりホテルのアンケートが置いてあった。
ホテルで販売しようと思っているピクニックセットらしく、味や盛り付け、カトラリーに関して、びっしりと質問事項があった。
それを見た鈴は、うわあ……と言って、苦笑いする。
「書くの大変そうです」
「助けてもらって嬉しいが。
徹底的に利用する気だな。
転んでもタダでは起きないやつだ」
と尊は呟いていた。
転んでも、か。
確かに、どうごまかしても、窪田は今回のことで、次期社長、征の不興を買ってしまうだろう。
「……申し訳ないことをしてしまいました」
と鈴が呟くと、尊は、
「お前がそんなことを思う必要はない。
俺が勝手にお前を巻き込んだんだから。
……ジイさんに言って、窪田とあのホテルはちゃんと守る」
と言ってくれた。
窪田が征に反逆しても、尊が跡を継ぐのなら、なにも問題ないのだろうにな、と思いながら、征とそっくりなその横顔を見る。
今の妻の息子、征か、先妻の子だが、長男の尊か。
なにを基準に、社長は跡継ぎを決めたのだろうかな、と鈴は思う。
だが、この件に関しては、触れない方がいいと思ったので、鈴は防波堤近くの駐車場を指差し、
「あの辺、車停められるみたいですよ」
と話を切り替えた。
「でも、道路沿いなので、車が人目についてしまいますね。
……葉っぱとか載っけてみましょうか?」
と駐車場にそびえる南国風の木を見ながら言って、
「やめろ。
余計目立つから……」
と言われてしまった。
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