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略奪されました
古城のようなホテルに着きました
しおりを挟む鈴たちの乗った車は、秘境にあるホテルに着いた。
森がひらけた場所にいきなり、古城のようなものがあり。
尊はそのホテルを今夜の宿にするつもりのようだった。
すごいホテルだな、と思いながら、後について入ると、すぐに支配人が出てきた。
体格のいい男前で、尊より十くらい上か。
若い支配人だな、と思って見ていると、尊が、
「急に来て悪かったな」
とその窪田という支配人に言っていた。
さっき、此処に着く直前に連絡したのだ。
あまり早いと確認のために、本家に連絡されたりするかもしれないからだろう。
窪田は昔、清白の執事長の下で働いていた男で、このホテルも清白の系列のものだと言う。
「いえいえ。
オープン前ですから、いつでもどうぞ。
まあ、中はまだ落ち着かない感じですけどね」
と窪田は後ろを振り返っている。
まだ内装は完成していないようで、業者や従業員が駆け回っていた。
すっきりとした室内装飾だ。
変にゴージャスに見せようとして、ごちゃついたりしていない。
それでいて、ガランとしすぎない程度に落ち着いた調度品がある。
趣味のいいデザインだな、と鈴は吹き抜けになっているホールの高い天井を見上げた。
「ヴィラの方はもう大丈夫ですよ。
ああ、お代は結構です」
と窪田が言う。
「その代わり、気になることや、もっとこうしたらいいと思われるところがありましたら、部屋に備え付けのアンケート用紙にご記入ください」
「……お前、俺をモニターにするつもりか」
と尊が言うと、いやあ、と窪田は顎に手をやり、
「征様と違って、貴方は、細かいことは気にしない人ですからね。
モニターとしては、あまり優秀じゃないと思いますが。
そういえば、今日は征様の結婚式では?」
ホテルからも祝電を送った、と窪田は言う。
「ああ、今、行ってきた。
征の花嫁はびっくりするような美人だと聞いていたが、たいしたことなかったな」
さっきの工場からスパナを持ってくればよかったな、と鈴がまだ雑然としているホール内を見回して、スパナを探していると、いきなり、尊が少し下がって立っていた鈴の肩を抱き、窪田の前に突き出した。
「でもまあ、俺の彼女の方が可愛いかな」
すると、窪田は、
「ああ、やっと紹介してくださいましたね」
と笑う。
「微妙な問題ですので、いつ、訊いたもんかなあ、と思ってたんですよ。
もしや、尊様もご結婚されるとか?」
尊は特に否定はせずに、
「まだ内緒にしといてくれ。
征が結婚したばかりだし」
と言った。
「ああ、俺が此処に居ることも内密にな」
と尊が付け加えると、
「承知しました」
とにんまり笑って、窪田は言う。
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