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第三の殺人
また勝手に謎を解いてやがる……
しおりを挟む「いえいえ、あの晩、或る音を聞いていたからですよ。
それに、聡さん、前から、よく言ってましたからね。
あのトイレ、玄関脇であまり人気がないからか、逢引をする輩が居ると」
音? と清水が思ったとき、すっと誰かが後ろを通っていった。
「おじさま、聡さんに言ったんでしょう?
緋沙実さんがあのトイレで浮気しているタイミングで、大きな音を立てて便器の蓋を落とすように」
「そうだ。
俺は小野田の前には現れないようにしてたんだが。
あの日は、自分の姿を奴に見せ、緋沙実たちの居るトイレの辺りまで誘導した。
そして、聡にトイレの蓋を上げて落とさせたんだ」
「あのとき、かなり大きな音がしましたよ。
私の寝てる部屋まで響くほど。
今回、あのトイレでいろいろあったので、今使うような人、ほとんど居なかったはずなのに。
まあ、緋沙実さんたちにとっては、いつもの逢引の場所に人が来なくて、これ幸いって感じだったんでしょうけどね。
緋沙実さんたちは、トイレに灯りはつけてなかったんじゃないですか?
灯りつけたら、誰かが北側の廊下を通ったとき、中が見えてしまいますもんね。
でも、融さんに誘導されて、トイレの前まで来た小野田さんは、灯りのついていないトイレから音がしたので、思わず、ドアを開けてしまった――。
鍵もかかってなかったのか。
聡さんが開けたのかは知らないですけど。
おじさまは、ちょっとした嫌がらせのつもりだった。
でも、意外にも小野田さんは緋沙実さんに本気で、緋沙実さんを縊り殺してしまった」
彩乃はそこで少し考える風な顔をして言う。
「もしかして、おじさまを殺したのも小野田さんだったのではないですかね?
小野田さんとおじさまの亡くなり方、一緒ですもんね。
とっておいた毒を使い、自殺したのかもしれませんね」
「だが、俺が死ぬのを笑って見てたのは緋沙実だぞ。
あの二人がグルだったのなら、俺が死んだあとも再婚しなかったのは変だし」
「緋沙実さんが笑っていたのは、これでようやく、貴方を独り占めできると思ったからですよ。
でも、おじさま。
ひとつ、わからないことがあるんですよ。
おじさまは、どうやって、聡さんに協力させたんですか?」
そこで、融は、ふん、と鼻で笑って言った。
「あいつには弱みがあるからだ」
「弱み?」
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