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それ、事件じゃないんですかっ!?

恐ろしい人だ、先生……

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 今日は、運良くなんだか、悪くなんだか、父、寛太かんたも休みの日なので、応援に来ていた。

 小学生のときならともかく、高校生にもなって、特に足も速くもないのに、父親にまで応援に来てもらうのは、ちょっと恥ずかしい気もするのだが……。

 そして、若手の刑事、小笠原も休みだったらしく、暇なのか、一緒に来ていた。

 うーむ。
 小笠原さんひとりが来てたら、これはこれで、女子に、かわいー、とか言われそうなキャラなんだが。

 なにせ、先生が目立ちすぎてるからな……、
といつも女の子たちにちやほやされすぎていて、特になにも感じていないらしい桂を見た。

「どんどん食べてくださいね、先生」

 風の気持ちいい木陰のタープテントで、母、路代みちよがいそいそと桂に料理をとってやっている。

 いや、走ったり、騎馬戦で馬になったりしている娘には……?
と思ったとき、ほら、と桂が夏巳に割り箸をくれた。

 そのとき、
「先生、この間はお世話になりました」
と通りかかった平川がテントを覗く。

 なったか?
とミートボールを食べながら、夏巳は思っていた。

 チン、で出来上がる冷凍食品のだが、安定の美味しさだ。

 桂に真正面から見つめられて話す平川は何故か、少し頬を赤らめている。

 ……純朴な男子高校生だけでなく、いい年したおじさんまで。

 恐ろしい人だ、先生。

 探偵としては、犯人から見て、なにも恐ろしくない人なんだが、と思っている間に、昼休憩は終わった。

 

 よし、行ってくるか、と夏巳がすでに砂まみれな靴を履いていると、一緒に外に出た桂が、
「夏巳、頑張れよ」
と爽やかに言ってくる。

 うーむ。
 これで怪しい探偵でさえなかったら……。

 いやいや、探偵でなくなったら、この人が此処に居る理由がなくなってしまうのだが、
と思いながら、夏巳が赤いハチマキを締めなおしていると、グラウンドの方を見ていた桂が、

「先生って、なんか先生ってわかるよなー。
 道や呑み屋で会っても」
と言い出す。

 暑い中、ジョウロで水を撒いたりしてくれている先生たちを見ながら夏巳も言った。

「あ、そうですよねー。
 なんでだろうな。

 先生っぽい雰囲気が出てるからですかね?
 あと……、服装?」

 休日だと、わからないかもしれないが。

 学校帰りの服装だと、書店などで会っても、あ、この人、先生だな、となんとなくわかるときがある。

 なんでだろうなと夏巳が考えている間に、桂は体育祭のグラウンドをぐるりと見回し、
「じゃあ、事件探してくる」
と無茶を言って、去っていった。



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