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白地図と最後の事件
窮鼠猫を嚙むっ
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「僕があの瓶を持っているところをあのかき氷屋さんに見られてたんですっ。
しょうがないじゃないですかっ、彼も殺らなきゃっ」
と男は叫ぶ。
危うく殺られるところだったかき氷屋は、横で、ひっ、と言っていた。
「死んでくださいっ」
と彼は律儀に捨てずに持っていたらしい毒入りの小瓶を茉守に向かって突き出した。
いやだから、殴ったり突き飛ばしたり、刺したりならともかく、飲ませられるわけないだろうっ、とニートは思ったが。
窮鼠猫を嚙むという。
人間、追い詰められたら、なにをするかわからない。
あの小瓶で、えいやっ、と茉守を殴りにかかるかもれしない。
今、ニートの頭の中にはトイレのカレンダーの『窮鼠猫を嚙む』の日本画のような絵が浮かんでいた。
ちなみに、トイレのカレンダーは米屋が、廊下の鏡は時計屋がくれたものだ。
「待てっ」
と飛び出すと、ひっ、と肝の据わっていない役所の男は山に向かって逃げ出した。
ああっ。
俺の枯山水がっ。
男は遠慮なく、どかどか走り抜けていった。
だが、ニートはおのれが丹精込めて描いた砂紋を踏むことを躊躇する。
ほんの一瞬の迷いだったが、鋭い茉守には見てとられていた。
「今ですっ、八艘飛びっ」
と茉守が叫ぶ。
いや、阿呆かっ、とニートは仕方なく砂紋を踏んで追い、無事に男を捕まえた。
捕まえた男を連れ、茉守たちは本土の署まで来ていた。
ニートも一緒だ。
もう、なにが引きこもりなのかよくわからない。
「あいつのスマホを調べたら、『ツギ ハ オマエダ』だけじゃなくて。
土砂崩れがロープウェイ建設のせいだって騒ぎになったとき、出回ってた怪文書の原文も出て来たぞ」
まあ、今はどうでもいい話だがな、と言う佐古に、合流していた倖田が、
「いや、よくないだろ」
と苦い顔で言う。
「……まあ、役所の中には反対派も居たからな。
あいつは違うと思ってたんだが」
そこで茉守が小首をかしげながら言う。
「彼女があの橋のせいで殺しに来たから、倖田さんを恨んだって言ってましたけど。
単に最初から快く思ってなかったんですね」
佐古がそこで、ひひひ、と笑って言った。
「きっと倖田がモテすぎるのが面白くない独身男性の会の会長だったんだよ。
俺も入りたかったな」
それにしても、と倖田が不満そうに言う。
「政治家だから、女性スキャンダルがあるだろうっていうのはなんだ。
政治家だから女性スキャンダルが暴かれる、の間違いだ。
そんなのは誰にでもある。
実際、実直な男に見えたあの役所の男にだって、その女とのすったもんだがあったわけだろ?」
女性が持っていたというナイフは男の供述に従い、別の海域をさらったら見つかった。
「でも、ナイフは捨ててるのに、なんで瓶の方は捨てなかったんですかね?」
と茉守が言うと、
「なにかに使えると思ってたんだろ。
自分の悪事がバレそうになったときとか」
とマグマが言った。
「実際、あれでこいつを殴ろうとしてたからな」
と茉守を見ながら、ニートが言う。
いや、小瓶で殴られても痛くもかゆくもありませんけどね……。
「ナイフの方が使えたろうにな」
とマグマは言う。
茉守はあの地図に、ナイフ、とか、小瓶落ちてた、とかもう書いても意味があるのかわからないようなことを書き込む。
しょうがないじゃないですかっ、彼も殺らなきゃっ」
と男は叫ぶ。
危うく殺られるところだったかき氷屋は、横で、ひっ、と言っていた。
「死んでくださいっ」
と彼は律儀に捨てずに持っていたらしい毒入りの小瓶を茉守に向かって突き出した。
いやだから、殴ったり突き飛ばしたり、刺したりならともかく、飲ませられるわけないだろうっ、とニートは思ったが。
窮鼠猫を嚙むという。
人間、追い詰められたら、なにをするかわからない。
あの小瓶で、えいやっ、と茉守を殴りにかかるかもれしない。
今、ニートの頭の中にはトイレのカレンダーの『窮鼠猫を嚙む』の日本画のような絵が浮かんでいた。
ちなみに、トイレのカレンダーは米屋が、廊下の鏡は時計屋がくれたものだ。
「待てっ」
と飛び出すと、ひっ、と肝の据わっていない役所の男は山に向かって逃げ出した。
ああっ。
俺の枯山水がっ。
男は遠慮なく、どかどか走り抜けていった。
だが、ニートはおのれが丹精込めて描いた砂紋を踏むことを躊躇する。
ほんの一瞬の迷いだったが、鋭い茉守には見てとられていた。
「今ですっ、八艘飛びっ」
と茉守が叫ぶ。
いや、阿呆かっ、とニートは仕方なく砂紋を踏んで追い、無事に男を捕まえた。
捕まえた男を連れ、茉守たちは本土の署まで来ていた。
ニートも一緒だ。
もう、なにが引きこもりなのかよくわからない。
「あいつのスマホを調べたら、『ツギ ハ オマエダ』だけじゃなくて。
土砂崩れがロープウェイ建設のせいだって騒ぎになったとき、出回ってた怪文書の原文も出て来たぞ」
まあ、今はどうでもいい話だがな、と言う佐古に、合流していた倖田が、
「いや、よくないだろ」
と苦い顔で言う。
「……まあ、役所の中には反対派も居たからな。
あいつは違うと思ってたんだが」
そこで茉守が小首をかしげながら言う。
「彼女があの橋のせいで殺しに来たから、倖田さんを恨んだって言ってましたけど。
単に最初から快く思ってなかったんですね」
佐古がそこで、ひひひ、と笑って言った。
「きっと倖田がモテすぎるのが面白くない独身男性の会の会長だったんだよ。
俺も入りたかったな」
それにしても、と倖田が不満そうに言う。
「政治家だから、女性スキャンダルがあるだろうっていうのはなんだ。
政治家だから女性スキャンダルが暴かれる、の間違いだ。
そんなのは誰にでもある。
実際、実直な男に見えたあの役所の男にだって、その女とのすったもんだがあったわけだろ?」
女性が持っていたというナイフは男の供述に従い、別の海域をさらったら見つかった。
「でも、ナイフは捨ててるのに、なんで瓶の方は捨てなかったんですかね?」
と茉守が言うと、
「なにかに使えると思ってたんだろ。
自分の悪事がバレそうになったときとか」
とマグマが言った。
「実際、あれでこいつを殴ろうとしてたからな」
と茉守を見ながら、ニートが言う。
いや、小瓶で殴られても痛くもかゆくもありませんけどね……。
「ナイフの方が使えたろうにな」
とマグマは言う。
茉守はあの地図に、ナイフ、とか、小瓶落ちてた、とかもう書いても意味があるのかわからないようなことを書き込む。
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