神の住まう島の殺人 ~マグマとニート~

菱沼あゆ

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白地図と最後の事件

また事件ですか?

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「おい、菊池茉守を名乗ってる奴」

 此処に居たのか、と言いながら、佐古がマグマの家の母家にやってきた。

 開け放たれていた縁側から覗く。

「お前、山頂で観光客の写真を撮ってやったか?」

「どうしたんですか?
 また事件とか?」
とアイスを手に茉守がそちらに行くと、佐古は縁側に腰掛け、

「そうそう事件があってたまるか。
 かき氷屋が撮った写真とやらに霊が写ってるんだが」

 佐古が見せてきたスマホを覗き込み、あー、と言って茉守は笑う。

「すみません。
 思ったより霊の移動が遅かったみたいですね」

「どんなすみませんだ……」
と言ったあとで、佐古は、

「いや、俺が気になってんのは、こっちだ」
とスマホを手渡し、もう一枚の写真を見せてくる。

「この不自然に人物が寄ってる写真、誰が撮ったんだ?」

「こっちは私ですね。
 変に寄ってるからまずいなと思って、かき氷屋さんと交代したんです」

「なんで寄ったんだ?」

「霊が写りそうだったからですよ」

「……かき氷屋が撮っても写ってるじゃねえか」

 てか、このあとあいつらが撮ってた写真も戦国武将とか写ってたぞ、と言われる。

「あっ、すみません。
 私がスマホに触ったから、しばらく力が残ってたのかも」
と言うと、佐古が慌てて茉守の手からスマホを取り上げる。

 帆村が、
「いいじゃないですか、佐古さん。
 霊が写ったら、事件解決に役立つかもしれませんよ」
とおのれのスマホではないからか、そんな呑気なことを言っていた。

 だが、そこで帆村は少し考えて言う。

「でも、そういえば、この霊の人、あの人に似てませんか?」

「誰に似てんだよ。
 霊に知り合いは居ねえよ」

「橋の上で死んでいた女性ですよ」

 なんか似てませんか?
と言う帆村に、佐古がキレる。

「霊なんて、マジマジと見てねえよ。
 ってか、顔写ってねえじゃねえかっ」

 帆村は佐古のスマホを受け取り、眺めたあとで、
「いや、この背格好とか髪の長さとか、スカートの感じとか」
と言う。

「なんだよ。
 まさか、この女も山頂で殺されて、橋の上まで運ばれたっていうのかよ。

 じゃあ、犯人はもう、かき氷屋だよ」
と佐古も言う。

 茉守が、
「でも、山頂で殺されたとは限らないですよ」
と言うと、佐古は茉守を睨んで言った。

「じゃあ、なんで、橋の上で死んだ奴が此処に写ってんだよ」

「さあ?
 霊の考えることはわかりませんから。

 霊だって、勘違いもしますしね。

 署長さんの霊もマグマさんに殺されたのかと思って、いっとき、マグマさんに憑いてましたよ」
と茉守はあっさり言い、ニートが、

「ああ、あのちょっと憑いてた白いの、署長だったのか」
と呟く。

「何処に居んだよっ、署長っ」

「僕らサボってませんっ」
と佐古と帆村は、相手が霊だから、というのではなく、慌てふためく。

 相当なパワハラ署長だったのかな、と茉守は思った。


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