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白地図と最後の事件

事件を一から見直してみよう

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「とりあえず、事件を一から見直してみましょう」

 そう言い、茉守はあの白地図をポケットから出してきた。

 だが、折り畳んでいたあの地図は真っ白に戻っていた。

「ポケットに入れてたからですかね?
 フリクションペンで書いてたんで」

「いや、お前、フリクション消えるの、60℃からだからなっ」

 どんだけ熱高いっ?
とマグマは叫んだあとで、

「マグマさん」
と通りかかった警官に声をかけられ、そちらに行ってしまった。

 ニートが、
「まあ、また一から書き込んでいけ」
と茉守の手にある白地図を指差す。

 はい、と茉守は言ったが、まだなにかの熱が残っているのか、書き込んでも書き込んでも消えていく。

「あれっ?
 書く端から消えていきますよ」
と茉守が言うと、

「熱残ってんだろ。
 どんだけ体温高いんだ」
と言いながら、ニートが茉守からペンをとる。

 なにかを白地図に書き込みはじめたが、その文字も端から消えていった。

 あ
 り
 が
 と
 う

 おそらく、瑞樹のメッセージを伝えたことに対しての感謝だろう。

「なに書いてんだ?」

 ひょいとマグマが覗いてきたとき、消えそびれた『とう』の文字が残っていた。

「なんだ、とうっ! て。
 変身ヒーローか」
とマグマが笑い出して、ニートが眉をひそめる。

「また文字消えたのか?
 お前の体温は、60℃以上なのか?

 幾ら今日、暑いっていってもな。
 お前、人体改造でもされてんのか?」

 とうとうと言ってくるマグマの言葉を茉守が遮る。

「マグマさん、冷静に考えてください。
 改造されてるのは、おそらくフリクションペンです」

 そういや、そうだな、という顔をニートがした。

「簡単に消えるようになってたんでしょう。
 これ、組織の事務室にあった奴なんで」

「組織の物だったのか。
 暗殺七つ道具のひとつとかか」

「体温で消えるフリクションペンで、どう暗殺するんだよ」
とニートは言うが。

 いや、それ以前に、今、普通に事務室からもらってきたって言いましたよね?
と茉守が思ったとき、マグマがペンをとった。

 ニートの額に、
「殺」
と書く。

 が、それはすぐに消えた。

 体温程度の熱で消えるからだろう。

「こうして遊べるな」

 次は茉守の持っていた赤いペンで、ニートの額に丸い点を描く。

「一発芸『レーザー照準器を当てられ、狙われてる人』」

「あ、マグマさん。
 それ、フリクションペンじゃない方です」

 マグマーッと額に消えない点をつけられて、ニートが叫ぶのを、通りかかったかき氷屋が見る。

 ようやくちょっと笑ったようだった。


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