神の住まう島の殺人 ~マグマとニート~

菱沼あゆ

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海に浮かぶ証拠と第三の殺人(?)

なにを考えてるんだ……

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 そのあと、茉守は倖田に付き添われ、ロープウェイで山頂に上がった。

 渓谷の深い緑もきらめく海も見えて。
 今日もロープウェイからの眺めはいい。

「絶景ですよね」
と茉守が言うと、倖田が嬉しそうに、

「だろ?」
と言う。

「反対派だったジイさんたちも、一度乗ったら病みつきになって、しょっちゅう乗ってるらしいぞ。

 島の人間は年間パスポートが買えるからな。

 ……なに考えてる」

「いえ。
 せっかく年間パスポートを買ってるのなら、ことあるごとに活用しようと思いますよね」

「……年間パスポートがあるからって、山の上に呼び出して殺そうとか。
 プチプチに包んで運ぼうとかしないと思うぞ」

 何故、私の考えてたことがわかりましたっ、と茉守は驚く。

「倖田さんは超能力者ですかっ」

「お前の考えなぞ、マグマでもお見通しだっ」
と叫んだあとで、倖田は、……いや、と言う。

「いや、わからないことはたくさんあるんだが。

 普通、こういうミステリアスな美女には惹かれるものだと思うが。

 お前の場合、ミステリアスを通り越して、得体が知れないから、惹かれる以前に怖いな」

 顔も綺麗すぎて不気味だ、と横目にこちらを見ながら、倖田は文句を言ってくる。

「うーん。
 でもそういえば、ロープウェイは呼び出すときより、重たい物下ろすときにいいかと思ったんですけどね。

 死体とか」

「いや、お前だろっ。
 転がした方が早いっつったのっ」

「あと、ほんとうにニートさんの庭に落とす気だったのかも気になります。
 山頂から落としたのか、そうでないのか。

 まあ、汚れてたから山頂からでしょうけどね。
 プチプチに傷もありましたし」

 そこで茉守はあの楠のある方角を見て黙る。

「……今、なに考えてんだ」

 ロクでもないこと考えてそうな、その沈黙が怖い、といった感じで、倖田が訊いてきた。

「山頂から転がす以外になにかあるかなと思って。
 あらゆるパターンを考えた方がいいと思うので。

 ……ドローンで運ぼうとして、ぼとっと落としたとか?」

「どんなデカいドローンだよ。
 ドローンもぶら下がってる死体も目に付くだろうが」

「じゃあ、気球とか」

 気球何処から来たんだよっ、と倖田が叫ぶ。

「ドローンよりデカいだろうがっ」

「いや、気球だったら、なにかのキャンペーンで飛ばしてると思ってもらえるかもしれないじゃないですか」

「思ってもらえるって……。
 なんかお前の思考って犯罪者寄りなんだよな」

「そういえば、倖田さんは、そんなにロープウェイを使いたがっているのに、なんで、昨日はニートさんと自力で山頂まで上がってきたんですか?」

「お前の話、ほんと飛ぶなっ」
と文句を言ったあとで倖田は言う。

「急いでたからだよっ。
 遠回りだろうが、ロープウェイ使ったらっ!」

 ってか、なんだこの莫迦と天才を掛け合わせたら、どっちでもなくなったみたいなのっ!
と倖田は叫ぶ。

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