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海に浮かぶ証拠と第三の殺人(?)
この島での最重要事項は……
しおりを挟む茉守たちが街に下りると、ちょうどタバコ屋の前で聞き込みをしている佐古が居た。
「おう、なにかわかったか」
とこちらを振り返り、訊いてくる。
「まだなにも。
ああ、さっき、そこのアイスクリンを売ってるお店でちょっと聞いたんですけど」
かき氷屋さんの話を、と茉守が言うと、佐古が、うん? という顔をした。
「なにか怪しい点でもあったのか?」
「アイスクリンの店と山頂の売店、同じオーナーさんなんですね。
あの山頂の古いかき氷機、ちょっと癖があって、ふわふわにするのはかなり手間がかかるみたいですね。
あの若いかき氷屋さん、すごいです」
と茉守は言った。
「適当に作るのなら、早く作れるらしいんです。
あの人、雇われているだけみたいだし。
オーナーも忙しいときは、そこまで細かくなくていいよと言っているのに。
誰もチェックしてなくても、常に調整して丁寧に氷を削ってらっしゃるみたいなんです。
此処に居る間に、もう一度食べてみたいですね」
「そうか。
じゃあ、やっぱり、山頂にも上がるか」
「……お前ら、そのただのカップルの会話みたいなの、事件となにか関係あるのか?」
そんな嫌味を言う佐古をスルーして、倖田は茉守に言った。
「ああ、山頂上がるときは、ロープウェイでな。
早くロープウェイ100万人突破とかやりたいから」
「そういえば、橋は何万人突破とかできないんですか?」
「有料じゃないから数えられないな」
有料にすればよかった、と倖田が舌打ちをする。
「あんな短い橋をか。
払いたくなくて、ジイさんたちまで海に飛び込んで泳ぎめるぞ」
と言う佐古に茉守が言った。
「船に乗ったらいいかと思いますね……」
そのあと、佐古と倖田は集会所で聞いた話などをしていた。
「この島の一番の重要事項は息子の嫁問題かよ」
「あの橋の女は、孫の嫁になると言って、じいさんばあさんから金を巻き上げた街の女じゃねえのか」
それで、詐欺だと気づいた老人たちに殺されたんだ、と倖田は言い出す。
「何処の老人だよ」
と胡散臭げに言う佐古に、倖田が言った。
「この島の年寄り全員が犯人だ。
同情してみんなでやったんだ。
そして、すべてを見てしまった署長を殺した」
「じゃあ、あの山頂の男は?」
倖田は一瞬、詰まったが、
「……署長を老人たちが殺しているところを見てしまい、刺されたんだ」
と言う。
散々、言わせておいて、佐古は小馬鹿にしたように倖田を見て言った。
「言っとくが、あの女の死体が一番新しかったんだからな」
だが、倖田も負けてはいない。
「じゃあ、署長じゃなくて、山頂の男の方が女を殺した現場を見てて刺されたんだ。
山頂の男は死んでないから、検死してないよな。
いつ刺されたのかわからないじゃないか」
「いやいや、刺されたの、女の死体が見つかる随分前だぞっ」
「先に女が死んでて、なんらかのトリックで、イキイキさせといたのかもしれないじゃないかっ。
冷蔵庫のCMで、魚を急速冷凍してイキイキッとかやってるじゃないかっ」
「いや、イキイキした死体ってなんだよっ?
ってか、魚と一緒にすんなよっ。
おい、旅行客っ、お前はどう思うっ?」
佐古が同意を求めてか、茉守を振り返った。
だが、茉守は、
「さっきから考えてたんですが。
野鳥の会を雇ってはどうでしょうね」
と呟く。
「お前まさか、ずっと橋の人数数える方法考えてたのかっ」
と倖田が言い、
「いや、それ以前に、二十四時間、野鳥の会に橋、監視させんのかよっ」
と佐古が叫ぶ。
二人は実に息が合っているように茉守には見えた。
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