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海に浮かぶ証拠と第三の殺人(?)
それはホンモノか?
しおりを挟む「余計なことってなにをだ」
と倖田に問われた茉守は、
「……いえ」
と言う。
倖田はそれ以上、その話には突っ込んで来ず、
「さて、このあとは、上に行くか、下に行くか」
と呟いた。
「そうだ。
お前、車は運転できるのか?」
「はあ」
「免許証は?」
「今はありません。
身元がバレるとまずいと思ったので」
「そうか。
俺ももうちょっとしたら、本土に戻るんで。
島の中を動くのに、うちにある車をどれか貸してやろうかと思ったんだが」
「そうですか」
「ところで、お前のその顔はホンモノか?」
免許証の有無を訊くのと変わりない感じで倖田はそう問うてくる。
「どういう意味ですか?」
「いや、もしかしたら、ニートがお前のことを知ってるかもしれないと思って変えて来てたのかなと思っただけだ」
「いえ、特には」
そうか、と言いながら、倖田は茉守の顔を眺めている。
「……整形って言われたら、そうかなって思うくらい整った顔だが。
まあ、そうじゃないんだろうな」
「なんでそうじゃないとわかるんですか?」
「幾ら腕のいい医者にかかっても。
整形だと、ずっと見てたら、やはり、何処か違和感があったりするからな」
「そうですかね。
整形かどうかなんて、大抵の人にはわからないと思いますよ。
倖田さんは目がいいんですね。
いえ、目というより、感覚が鋭いんですかね?」
そう茉守は言いかえた。
「あなたと居ると、誰と居るより、ビリビリした空気が伝わってきますよ」
「……俺が?
できるだけ、有権者の前では温厚そうな雰囲気を醸し出しているつもりなんだが」
マグマの方がビリビリしてないか? と問われる。
「マグマさんはビリビリはしてませんよ」
と言うと、ほう、と言う。
「マグマさんは、どんどこどん、って感じです」
なんだ、それは、と言って、倖田が少し笑った。
「仲良しですよね、みなさん」
「そういうわけでもない。
俺はそういい人間じゃないし。
あいつらはそれを知ってるし。
……だから、今でもあいつらと居るのは。
ただ、たまたま、裏切るタイミングがなかったから、それだけだ」
「そうですか」
とあっさり言ったあとで、茉守は、
「でも、この先もないと思いますよ」
と付け足した。
「……予言者か」
「いえ、後ろの方がそうおっしゃってるんで」
「だから、なにが居るんだよっ」
と倖田はキレた。
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