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海に浮かぶ証拠と第三の殺人(?)

マイペースすぎる……

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「いやあ、そんなこと言われても。
 僕の技術が素晴らしかったんじゃないですかね~」

 那須が電話でそんなことを話しているのを茉守はひとり道の上で聞いていた。

 警察はもうある程度撤収している。

 いつの間にか横にマグマが立っていた。

 いや~、まいったまいったと那須が頭を掻きながら、浜から道に上がってくる。

「編集長から電話が入ったんだけど。

 H大生だっていう匿名の女の子から電話がかかってきて。
 今朝の橋の記事、菊池茉守が綺麗に写りすぎてるって、文句をつけてきたって言うんだよ」

 女って怖いね~、と那須がこちらを見て笑う。

「そんなに綺麗に写ってたんですか?」
と茉守が問うと、那須は今日の朝刊を見せてくれる。

 友人なのに薄情にもマグマは那須の勤めているところの地方紙はとっていないらしく。

 今朝見たのは、全国紙だったので、小さな橋の開通式の記事なんて出ていなかった。

「……顔なんてそんなに写ってないじゃないですか」

 白黒の写真の載った記事を見ながら茉守は言う。

「そりゃ、橋がメインだから」

 茉守が橋の真ん中を渡ってきてはいるが、顔はそんなによくわからない。

「いや、たまにあるんだよ、こういうこと。

 美人すぎるなんとかって特集記事が載ってたけど、あの人、そんなに美人じゃないですとかって、電話がかかってきたりとか。

 茉守ちゃんを敵視してる学校の子とか居ない?」

「はあ、どうなんでしょうね」
とまだ新聞を眺めながら、茉守が言うと、

「興味なさそうだよね、君。
 周りが自分をどう思ってるかとか」

 マイペースそう、と言って那須は笑った。

 彼が去ったあとで、マグマが茉守を見下ろして言う。

「電話かけてきた女の息の根を止めに行くなよ」

「今、那須さんもおっしゃってたじゃないですか。
 そんな人に興味はありません」

 そう茉守が言うと、マグマは、

「俺はお前のそんな発言の方が怖いが……」
と呟いたあとで、ひとつ大きく息を吐く。

 浜に戻った那須と居るニートを見て訊いてきた。

「そういえば、さっきの女の生き霊とかニートに憑かないのか」

「言ったじゃないですか。
 ニートさんの守護霊は強いので。

 誰も彼には祟れません。
 ニートさんは祟って欲しそうだったですけどね。

 ……ニートさんは霊にも心を開いていないのですかね?

 薄い影くらいしか見えないとおっしゃってるようですが」

「そういえば、昔はもっと見えるようなことを言っていたな」
と言いかけ、気づいたようにマグマは言う。

「待てよ。
 ニートが霊に心を開いてないから見えないと言うのなら、お前は霊には心を開いているのか?」

「私は霊にも人間にも開いてますよ」

 いや、ぜんっぜん、そうは見えないがっ!?
と相変わらず、表情のない茉守を見て、マグマが叫ぶ。


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