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海に浮かぶ証拠と第三の殺人(?)
触るなよ、女子大生
しおりを挟む砂浜に行くと、那須だけではなく、佐古が居て、渋い顔をしていた。
昨日、あれからまた橋を調べに来て遅くなったので、実家に泊まったのだと言う。
すると、お年寄りが早朝の散歩で妙な物が見つけたと騒ぎ出して、それが那須に伝わり、佐古にも連絡が行ったのだと言う。
「どうした?
閉鎖的な場所は嫌だと島を出て行ったくせにまだ居たのか」
と言ったマグマに、佐古が噛み付くように言い返している。
「こう事件が頻発したら、仕方ないだろうがっ」
「……お前を実家に帰したいお前の親がやってんじゃないだろうな、連続殺人」
ああ、最初の奴は死んでねえのか、とマグマが言ったとき、那須が言った。
「いや~、あの女性、やっぱり服毒自殺じゃないかもしれないって話になって、警察は頭抱えてんだよ」
那須が、
「これが砂浜に打ち上げられたんだ。
海を漂っていたらしい」
と指差した先には、白い紙があり、そこにはこう書いてあった。
「ツギ ハ オマエダ」
茉守が読み上げると、倖田が言う。
「この間の奴の予備じゃないのか」
「なんだ、予備って」
と那須が訊く。
「俺は忘れたりなくしたりのミスがないよう、大事な書類とかメモ書きはふたつ用意して、別のところに入れとくぞ」
「じゃあ、お前が犯人な」
と海越しにあの橋を忌々しげに見ながら、佐古が言う。
「俺は社会人としての心得を語ってんだろっ」
「っていうか、それ以前に、これ手書きっぽいフォントだが、印刷だろっ」
前のとは違うぞ、と言う佐古に、
「わからないぞ。
此処に、フォントのような文字を書く女が居る」
とマグマは茉守を手で示したあとで、
「お前が犯人か?」
と真顔で訊いてきた。
「いえいえ。
この件は違います」
と茉守も真顔で返して、
「どの件なら犯人なんだよっ」
とマグマと佐古に叫ばれる。
「言葉の綾ですよ」
茉守は倖田と同じことを言い、さっきまで満ちていたのか、濡れている砂の上を歩いていった。
鑑識が到着するまでそうしておくつもりなのか。
その紙は波打ち際に置かれたままになっていた。
おや? と茉守は身を乗り出して見る。
「なんか下に薄く書いてありますよ」
「触るなよ、女子大生」
とすぐに近くに居た佐古が茉守を制する。
大丈夫です、と言って、茉守はその濡れた白い紙の前にしゃがんだ。
「どうした?
またかき氷屋のシロップでもついてたか」
そう言いながら、マグマが側に来た。
「海を漂ってたんなら、流れ落ちたりするんじゃないのか」
とニートも来て、上から覗き込む。
「ほら此処」
と茉守はその文字の下を指差した。
「ツギ ハ オマエダ」の下には、鉛筆で薄く書かれた矢印があった。
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