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容疑者マグマと第二の殺人
包帯の下
しおりを挟む「今日は俺も此処に泊まる」
と倖田が言い出し、ニートは離れに、マグマは自分の部屋に、茉守はさっきの和室に。
倖田はいつも此処に泊まるとき、使う部屋で寝ることになった。
茉守が月明かりに照らし出された長い廊下を歩いていると、
「おい」
と声がした。
振り向くと、倖田が立っていた。
「お前にはなにもかも見えてるんだよな?」
「……見えてるだけで、事件のことなんて、なにもわかりませんよ」
と言ったが、倖田は、事件のことじゃない、と言う。
「それなら、ニートさんにも見えてると思いますよ」
さらっと茉守はそう言った。
「霊が見える奴はみな口が堅いんだな」
「言ったところで誰も信じないって知ってるからですよ。
幼い頃からの経験で」
ふうん、と言って、それ以上は追求せずに倖田は行こうとする。
茉守に黙っておけと言うこともなく。
だが、ふと足を止め、倖田は少しだけ振り向いて言った。
「人と違う世界を見て生きるのは辛くはないのか?」
「いえ、別に。
これが私の人生なんだなと思って。
あと……
私、あまり感情がないので」
「ニートみたいだな。
いや、あいつは昔はああじゃなかったんだが」
と少し心配する風な顔をする。
茉守はちょっと笑いたくなった。
いや、またタイミングを外してしまったので笑えなかったのだが。
「いい人なんですね、倖田さん。
そんなモノに憑かれてるのに」
口に出して言うなっ、と倖田に怒鳴られる。
なに揉めてんだ、こいつら、とマグマは寝たフリをしながら思っていた。
倖田にはなにか悪いモノが憑いているのだろう。
別に驚かんな、とマグマは思っていた。
ああ見えて意外に正義の政治家だが。
正義を押し通すために、いささか強引なこともやっているようだったから、誰かに祟られていても驚かない、と思っていた。
ニートがときどき、倖田の後ろを凝視してるしな。
気づいてはいたが、なにも言わなかった。
まあ、そんなことより気になるのは、あの女だ、とマグマは思う。
さっき風呂から出てくるとき、またあの足首の包帯をキッチリ巻き直していた。
あの下にあるのは、ほんとうにミサンガなのか。
なにか気になる……と思いながら、うとうととする。
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