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容疑者マグマと第二の殺人
有能なニート
しおりを挟むそのあと、倖田は佐古以外の刑事に話を訊かれたが、特になにも知らなかったので、茉守たちごと現場を叩き出された。
全員でマグマの家に戻り、ニートが淹れてくれたお茶を食堂で飲む。
「くそっ。
ドラマとかミステリーなら、此処でもう、全員の死因とか。
そんなに細かく出るかっ、ていうような死亡推定時刻で出揃ってて、推理に入っているのにっ」
とマグマがわめき、倖田が文句をたれる。
「明日の新聞でも見ろとか言いやがって、佐古の奴。
そうだ、マスコミは知ってんじゃないのか?
那須に電話してやるっ」
と倖田はスマホをつかんでいた。
「倖田さんのご依頼により、探偵になれたのに、なかなか上手くいきませんね」
少し薄めのお茶を飲みながら茉守は言って、
「……いや、別に探偵になれたわけじゃないからな」
とニートに諭された。
カーテンは開け放したままだったので、ニートの枯山水の場所も見えた。
茉守は頭の中でいろいろシミュレーションしてみる。
「……でも、実際にやってみないとな~」
と呟いて、
「なにをやるんだ。
ロクでもないことをやりそうだが」
と那須が電話に出なかったらしい倖田に睨まれる。
那須は佐古にこのメンバーに事件のことを話さないよう、口止めされているのかもしれないと思った。
「ともかく、被害者のためにも、警察より先に真相にたどり着くんだっ」
と同時に宣言するうマグマと倖田に、ニートが言う。
「なんの競争だ。
そして、なんでお前らが解決することが被害者のためなんだ」
倖田は、
「この辺りの警察は、あんまり殺人事件なんて遭遇しないから。
今回の事件に関しては、そう有能とは言えないと思う」
と、じゃあ、あんたは何処で遭遇したんだ、と問いたくなるようなことを言い、マグマは、
「俺の居ない警察が有能なわけがない。
絶対、冤罪事件を作り出すから、先に俺たちが解決すべきだ」
と無茶を言う。
倖田はまた何処かに電話をかけていて、ニートの姿は見えなかったので。
茉守はマグマと一緒に湯呑みを洗ったりした。
綺麗に拭いたあと、食器棚に戻そうとしたが、古い食器がぎっしりあって、入らない。
「俺も捨てられない人間だけど。
うちの親も捨てられないんだよな」
退け、と言って、マグマは茉守の手から湯呑みをとり、パズルのように積み込まれた食器棚に食器を押し込んでいた。
「まあ、古い茶碗とかとってたら、そのうち、オールドなんとかとか、レトロなんとかとか、勝手に名前がついて、値段が上がるかもしれないよな」
「オールド100均とか?」
「……それは幾らなんでも値段つかんだろうが」
大量生産すぎだろ、と言われたが。
「その時期、その店でしか取り扱ってなかった100均の商品もあるかもしれません」
と茉守は食い下がる。
「お前、100均好きか」
「はい、初めて見たとき、驚きました。
100円で買える商品があんなにあるだなんて。
新生活をはじめるにあたり、欲しいものがなんでも手に入りまして、びっくりしました」
「……びっくりした顔もせずに、びっくりしてたんだろうな」
マグマは初めて100均を訪れた茉守の姿を想像しているかのような遠い目をする。
「しかし、100均知らないとか、どんなお嬢様なんだよ。
それか、山の中で育ったのか?」
「いえいえ。
小さな頃、初めて行ったときの話ですよ」
そう茉守が言ったとき、倖田が、
「他の記者も出やがらない。
おのれ、佐古めっ」
とスマホを睨みつけて叫んだ。
「たまたま出ないだけかもしれないだろ」
マグマの方が少し冷静になって、そう言ったとき、縁側の方からニートが戻ってきた。
「今日殺された女が宿泊していたかもしれない宿の話を今聞いたが……」
警察もまだ知らない、とニートがスマホを手に言った瞬間、マグマと倖田が、
「でかした、ニートッ。
すぐ行くぞ、その宿っ」
と前のめりになる。
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