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容疑者マグマと第二の殺人
祟りが人を殺すわけがない
しおりを挟む「危うく、お前らへの意地で死体を捨てて、犯人と疑われるところだったよ」
倖田はマグマたちにそう言った。
ニートが、いや、普通、捨てないだろ、という顔をして見ている。
向こう岸から橋を渡って駆けつけてくるパトカーを眺めながら、倖田は呟いた。
「橋ができたら、こういうことも容易になったな」
今までは船かヘリでないと、本土から警察は来られなかったので。
島の駐在所の人くらいしか、すぐに現場に来られる者は居なかったのに。
「では、殺人を犯すなら、橋ができる前の方がよかったのかもしれませんね」
と言ったあとで、美貌の旅行客、茉守はなにやら考えている。
「どうした?」
と倖田が問うと、
「いえいえ。
ふと思ったんですよ。
倖田さんは死体を見つけて、警察に通報しました。
拾得物を警察に届けると、あとで落とし主から一割お礼にもらえたりするではないですか。
この場合はどうなるのかなあと思って」
「……死体の一割とかいらないからな」
「そうなんですけどね。
ほら、霊が憑いちゃうことって、あるじゃないですか。
あれがその一割なのかなって」
と倖田は茉守に見つめられ、慌てて左肩側から、背後を振り返る。
「そっち、違う人ですよ」
やめろー! と倖田は叫んだ。
「橋ができてから、怒涛のように事件が起こるな。
だから、俺は橋作るの、反対したんだよ」
と佐古というマグマとよく話している刑事が呟くのを茉守は聞いていた。
彼はどうやら、この島の出身らしい。
地味で堅実そうな外見だ。
「そういう意味では、お前が犯人だな、倖田。
お前が橋作りを後押ししたせいで、年寄り連中が言うように災厄が手を取り合って、押し寄せてきてる」
「災厄ね。
祟りが人を殺すわけないじゃないか。
人を殺すのは、いつでも人間だよ」
素っ気なく倖田はそう言った。
「……それに何故か、いつもこいつら、現場に居るし」
と佐古はこっちを見る。
マグマが、
「いや、今居たのは、こいつに通報されたからだ」
と倖田を指差し、倖田は佐古に、何故、そっちに通報するっ、という目で見られていた。
「それにしても、見たことない女だな」
とまだ鑑識が居るので少し離れた場所から死体を見ながら、佐古は言う。
「……『名探偵、みんなを集めて、さてと言い』じゃないよな。
いつも、『死体を集めて、さてと言い』だ。
死体増える前に解決しろよって思わないか?」
それは私も常々思っていますね、と茉守は佐古に心の中で同意していたが。
佐古はマグマとニートのついでに茉守も見、
「いいか。
ほんとうに事件を解決するのは、お前ら探偵ごっこをやってる奴らじゃない。
俺たち警察だからなっ」
出しゃばるなよっ、と釘を刺してくる。
「いや、やってないからな、探偵ごっこ。
誰からも事件解決しろなんて請け負ってもないし」
とニートは言ったが、
「いや、俺が雇おう」
と倖田が手を挙げる。
「佐古に任せておいたら、俺が犯人にされかねん。
マグマ、ニート、旅行客」
……名前、覚えてください。
「お前ら、この事件を警察より早く解決しろっ。
金ならあるっ」
と倖田はブラックカードを掲げ、おいっ、と佐古に怒鳴られていた。
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