10 / 75
消えずの火と第一の殺人
フラれたようだな
しおりを挟む「橋、大盛況のようだ」
電話を切った倖田がこちらにやって来ながら言う。
「事件のせいで」
「災厄が押し寄せてきてますね」
と茉守は言った。
自分ひとりが渡っただけで、災厄が来ると言われたのに。
そんな大量に渡ってきたら、災厄だらけになるのでは、と思いながら、できたばかりの橋を見下ろす。
確かに、人が増えている。
「おい、お前、今日は島から出られないぞ」
と茉守は倖田に言われた。
「何故です?」
「事件、全然解決しそうにないから。
第一発見者のお前も足止めだ」
「そうなんですか。
宿の用意はしてないですが」
「じゃあ、うちに泊まるか?」
と倖田が訊いてきた。
「心配するな。
俺は居ない。
島の方の家に今居るのは、手伝いのばあさんだけだ」
「うちでもいいぞ。
飯でも作ってくれるのなら」
とマグマも言う。
「マグマさんちも誰も居ないんですか?」
「うちの親たちは俺に寺を任せて、旅に出てる。
離れにはニートが居るが」
茉守は少し考え、
「ごはんですか……。
カップ麺なら作れる気がします」
と言った。
「考えないと、カップ麺も作れねえのかよっ」
どんなお嬢様だっ、と叫ばれていたようだが、ふと気づいて、かき氷屋、というか、売店の裏に行く。
そこで、じっとなにもない空間を見つめていると、ニートが来た。
「なにか居るのか?
被害者の霊か?」
と訊いてくる。
「いえ。
生きてても、魂抜けてくることあるみたいなんですけど。
今は見ないですね」
そうか、と言うニートを見つめ、茉守は問う。
「ニートさんも霊が見えるのではないですか?」
「いや……たまに白い影みたいなのが見えることはあるが、それだけだ」
「あの、ニートさん」
と呼びかけたあとで、茉守は少し考え、
「いえ、後でいいです」
と言った。
「……そうか」
と言って、ニートは去っていった。
「おい」
とマグマが茉守に呼びかけてくる。
「お前、どっち泊まるんだ?」
「えーと、じゃあ、マグマさんのお寺にお邪魔させていただいてもいいですか?
神の住む島のお寺に興味があるので」
と茉守は言った。
茉守がニートとかき氷屋の前に居る警官のところに行くのをマグマは見ていた。
「俺はフラれたようだな」
と倖田はなんの感慨もなさそうな口調で言ったあとで、
「あの女、お前に気があるんじゃないか?」
と言ってくる。
マグマは、警官と話している茉守を見ながら、ないだろう、と言う。
「うちにしたのは、なにか考えがあるんだろうよ」
「考え?」
「……あいつが、ホンモノの災厄でなければいいが」
とマグマは茉守の足首に巻かれた包帯を見る。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
引きこもり名探偵、倫子さんの10分推理シリーズ
針ノ木みのる
ミステリー
不労所得の末、引きこもり生活を実現した倫子さん。だが、元上司である警察官に恩がある為仕方なく捜査協力をする。持ち合わせの資料と情報だけで事件を読み解き、事件を解決へと導く、一事件10分で読み切れる短編推理小説。
ここは猫町3番地の5 ~不穏な習い事~
菱沼あゆ
ミステリー
「雨宮……。
俺は静かに本を読みたいんだっ。
此処は職場かっ?
なんで、来るたび、お前の推理を聞かされるっ?」
監察医と黙ってれば美人な店主の謎解きカフェ。
5話目です。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
先生、それ、事件じゃありません
菱沼あゆ
ミステリー
女子高生の夏巳(なつみ)が道で出会ったイケメン探偵、蒲生桂(がもう かつら)。
探偵として実績を上げないとクビになるという桂は、なんでもかんでも事件にしようとするが……。
長閑な萩の町で、桂と夏巳が日常の謎(?)を解決する。
ご当地ミステリー。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる