47 / 60
遥人の結婚式 ―千夜一夜の物語―
お腹にためてると、ストレスになるので
しおりを挟むかなり園内を回った夕方近く、遥人が、
「ずいぶん寒くなってきたが、イルミネーション見るか?」
と訊いてきた。
「寒いですが、見ます」
と主張すると、わかった、と言ってくれる。
年末の野外でのカウントダウンに行った人たちが、これは、なんの罰ゲームだ、と思った、とよく言うが、今もちょっとそんな感じの寒さだった。
街中に戻れば、きっとそれほどでもないのだろうが。
「あれ着てくればよかったです。
あの駅伝とかの人が待ってる間に着てる。
下からこう、チャーッとファスナーが上げられる」
と言うと、わかったわかった、と言われる。
「名前言わなくても、なんだかわかったぞ」
「色気もくそもない格好ですが、今はしたいです。
あの目の前の、カップルのミニスカートで生足の人がお腹が痛いんじゃないかと思って気になってしょうがないです」
「お前は本当に色気がないな」
そんなことは言われなくてもわかっている。
もし、自分がこういうタイプじゃなかったら、如何に遥人が手を出すまいと思っていても、毎晩一緒だと、さすがにこうは貫けなかったんじゃないかと思う。
……我ながら、ちょっとむなしいが。
イルミネーションは綺麗だった。
特に青っぽい電飾は綺麗だな、と思う。
でも、それを見たかったのは、イルミネーションを楽しみにしていたからだけではない。
「このまま帰りたくないです」
思ったままをついに口にしてしまった。
イルミネーションを見て歩いているうちに、出口に近づいてきたからだ。
困ったような遥人に、
「大丈夫です。
言うだけです」
と近くの柵をつかんだまま言う。
目の前では、可愛らしいアリスの形の電飾がトランプの前で瞬いていた。
「お腹にためてると、ストレスになるので。
なんでもとりあえず、言うことにしてるんです」
「……口に出したら、周りのストレスになるだろうが」
「すみません」
遥人は空気が冷たいせいか、山だからか、下のイルミネーションが明るいわりには、綺麗に見える星空を見上げて言った。
「今日は、この辺りに泊まろうか。
明日、仕事に間に合うように早く出よう」
「……そうですね」
でも、いいんですか? と思ったが、言葉には出さなかった。
1
あなたにおすすめの小説
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
Zinnia‘s Miracle 〜25年目の奇跡
弘生
現代文学
なんだか優しいお話が書きたくなって、連載始めました。
保護猫「ジン」が、時間と空間を超えて見守り語り続けた「柊家」の人々。
「ジン」が天に昇ってから何度も季節は巡り、やがて25年目に奇跡が起こる。けれど、これは奇跡というよりも、「ジン」へのご褒美かもしれない。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
想い出は珈琲の薫りとともに
玻璃美月
ライト文芸
――珈琲が織りなす、家族の物語
バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。
ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。
亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。
旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。
サマー子爵家の結婚録 ~ほのぼの異世界パラレルワールド~
秋野 木星
恋愛
5人の楽しい兄弟姉妹と友人まで巻き込んだ、サマー子爵家のあたたかな家族のお話です。
「めんどくさがりのプリンセス」の末っ子エミリー、
「のっぽのノッコ」に恋した長男アレックス、
次女キャサリンの「王子の夢を誰も知らない」、
友人皇太子の「伝統を継ぐ者」、
「聖なる夜をいとし子と」過ごす次男デビッド、
長女のブリジットのお話はエミリーのお話の中に入っています。
※ 小説家になろうでサマー家シリーズとして書いたものを一つにまとめました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる