不眠症の上司と―― 千夜一夜の物語

菱沼あゆ

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浮気相手のちょっとした秘密

二人きりだが、なんとも思わないのか

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「うわぁ……日本にも来たか!!」

2024年11月25日に中国広東省仏山市で新型コロアウイルスによる肺炎が発生した。

そして、日本で初めて新型コロアウイルスが発生・発見されたのは2026年1月15日。

日本国内で初めて報告された感染者は中国人男性で、1月3日に中国の仏山市に滞在していたが1月6日に日本に帰国。
その後発熱があったため医療機関で受診したところ1月15日に「新型コロアウイルス」の感染が発覚した。

1月3日の時点で発熱があったということなので、仏山市で感染したものと思われ、1月9日には高熱で39度ほどあり入院もし、1月15日には退院した。

日本国内で新型コロアウイルスの感染者1人目が確認されて約9日ほどたったころ、今度は2人目の感染者が発生しました。

2人目もやはり仏山市に住んでいる中国人男性で、観光で日本に来日していたときに症状が出た。

2人目も仏山市で感染してから日本に入国してしまった形だった。

中国人観光客からのヒトヒト感染が発端だった。
そこから、1月20日3152人の乗客を乗せ日本の横浜港を出港した、“エメラルドプリンス”が中国、ヴェトナム、台湾を回り2週間後に帰国し、その乗客592人が現在検疫で感染が確認された。

それにより、乗客たちは船室に閉じ込められる事になった。

「日本DMAT(災害派遣医療チーム)と国からオルビガンの臨床試験を至急始めるよう要請がきた」

先に大流行している中国の臨床研究は仏山市と深圳市で実施され、このうち仏山市の病院で120人の患者を対象に行われた試験では、症状が改善した患者の割合を胸部をエックス線で撮影して計測した。
その結果、オルビガンを投与しなかった人たちは48.22%が改善したのに対し、投与したグループは98.43%で、オルビガンが新型コロアウイルスに有効という結果がでた。

それを踏まえて、オルビガンを治験薬として日本でも新型コロアウイルスに感染した患者に早期に投与をする事になった。

「藤宮、オルビガンを今ある250人分をエメラルドプリンスに持っていってくれ。で、定期的に患者のデータをとってきてくれ。医師として海外青年協力隊としてエポック患者の治療に携わっていたからできるよな!!」

オルビガンは既にインフルエンザ薬として承認を受けているけど、新型コロアウイルスへの適応はまだ承認されていない。
そのため適応追加を目的として、第2相試験から治験から行われる。

エメラルドプリンス号に乗り込み、感染している乗客に対し、同意を得て治験薬を使い、効果が期待できそうな少数の患者について、本当に病気を治す効果があるのか、どのような効き方をするのか、副作用はどの程度か、また、どの程度の量や使い方が良いかなどを調査する事になった。

海外青年協力隊としてエポックウイルス感染者の治療に携われたのは、エポックウイルスに関してはワクチンが開発されていて、派遣前に投与をし、抗体検査をして発症リスクがなかったから。

新型コロアウイルスに関してはワクチンなどなく、この仕事を引き受けるにあたり、感染リスクに晒される事になる。

防護着と医療用マスクなどを持ち込むも、治療に立ち合う事が怖かった。

社内倉庫に貯蔵しているオルビガンを医療用バックに詰め込み、横浜港に停泊しているエメラルドプリンス号に向かう。


災害派遣医療チームの日本DMATがエメラルドプリンス号の乗客の治療にあたってる。

「藤宮、待ってたよ!!海外青年協力隊として流行病の治療に携わってた医師免許を持ってる創薬研究員を派遣するとオリパスから連絡がきて、薬だけで治験の立ち合いは断る予定だったが協力をお願いする事にした」

海外青年協力隊時代に共に派遣されたメンバーの、京都大学救急医療学助教授の柴田翔琉先生が統括DMATとしてPCR陽性者の治療と搬送のサポートをされていた。

「感染症指定医療機関に受け入れを要請するも、船内が感染が拡大して、病床が空いてないと拒否されて困りはててる」

2月3日から船上検疫を始め、有症状者58名のPCR検査を実施したところ、2月5日に乗客・乗員32名の陽性が確認され、この日から全乗客の船室隔離が開始されたが、船内感染以前に旅行先での感染し、2週間経過した現在、651名に感染が拡大してしまった。

「未開院の幸田医科大学医療センターで受け入れ許可を得たから、軽症者、無症候者、同行者を連れて今、移動してる」

PCR陽性患者のデータを渡され、目を通す。
21.3%の乗客乗員に陽性が出て、そのうち、62.5%の人が無症状で、現在受け入れ先の病院で人工呼吸管理または集中治療室に入院してる人がが4.2%。死亡者が1.2%。

無症状と軽症の患者さんが多い。
感染力が高いウイルスで、無自覚で感染しているのに気づかずに人と接触し、感染を広げてしまう危険性がある。

「健康観察開始から2週間発熱・呼吸器症状等の症状がなくて、PCR検査で陰性だからって、下船させて大丈夫なのかな……。嫌な予感しかない」

柴田先生が怪訝そうな表情を浮かべてた。
軽症者、無症候者の感染者に対して、治験を行うために、幸田医科大学医療センターに移動する。

それから1ヶ月の間、オルビガンの治験を行うために幸田医科大学医療センターに滞在する事になる予定だった。

幸田医科大学医療センターで5回に分けて、計284人のエメラルドプリンスの乗客乗員を受け入れする予定になってる。

現在第3陣まで受け入れていて、無症状病原体保有者 125名、同行者の濃厚接触者45名が病院内で治療を受けている。

幸田医科大学の教授に開業後に救命救急を担当する医師と看護師、そして、全国各地から駆けつけてきた日本DMATの医師、看護師など、合計65~80名が治療に携わっていた。

常に医師が10名、看護師が50名が医療スタッフとして勤務する事になっていて、感染防止対策は飛沫感染、接触感染が絶対に発生しないよう徹底した対策が施されていた。

治験に入るにあたり、治験分担医師に同意説明文書に目を通して頂かないといけなくて、午後イチのミーティングでパワポで説明をする事になった。

そして、集まった医師メンバーを見て、目を見開く。
私が唯一愛した14年間付き合っていた恋人、東條一徹と8年ぶりに再会してした。

治験責任医師を務める柴田先生から、現役を退いて2年経つけれど、医師として力を貸して欲しいと言葉をかけて貰ったから、私も患者の治療に携わるつもりだった。

だけど、一徹が私に冷たい眼差しを向けて言い放つ。

「創薬研究員が感染し、研究所内にウイルスをばら撒いてしまうと抗新型コロアウイルス薬の開発が止まってしまう。データはメールで報告するので、すぐに立ち去って下さい」

創薬研究員は医療行為を行えない。
だから、治験責任医師に一任するのが一般的。

後から駆けつけた柴田先生が間に入ってくれて、私も患者の治療に携わる事になったけれど、一徹に浴びせられた言葉に私はショックを受け、塞ぎ込んでしまった。




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