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支社長室に神が舞い降りました
深月に触ると、祟りがあるぞ
しおりを挟む深月のざっくり感とか、適当さとかが、ものすごくよくわかる話だったな……。
だが、俺は深月のそういうなにも考えてないところが好きだ、と思いながら、陽太は衣装合わせしている深月を眺める。
万理が深月の千早の袖を引っ張りながら、
「やだ、あんたまた身長伸びたんじゃないの?」
と言うのが聞こえてきた。
大祭は十二年に一度らしいが、神楽自体は小規模ながらも、毎年やっているようだった。
深月は大人になってからも、じわじわと身長が伸びているらしく、袖が短くなってしまったようで。
世話焼きの姉のような万理に、あれこれ言われている。
いや、衣装を直しているのは、後ろに居る針山を腕につけたバアさんのようなのだが……。
だが、陽太は、そんな深月を眺めながら、
いや、どんどん伸びろ、と思っていた。
俺にはなかなか追いつかないだろうが。
そのうち、英孝は越すだろう。
陽太は、ふふふ、と笑いながら、頭の中で、深月にジョウロで水をかけていた。
夏休みの観察の宿題のヒマワリに水をやるように。
やめてくださいっ、と千早を着たままの深月が両手で頭を押さえて泣いているところを想像すると妙に可愛い。
などと考えていて、また、にやついてしまっていたようだ。
いきなり、後ろから、どすっ、となにかで背中の真ん中を刺された。
振り向くと、鯨尺くじらじゃくの竹のものさしで、清春が背中を突いていた。
「来い。
衣装少し直してあるから。
お前も深月と一緒でデカすぎるんだよ」
と言う。
そこに千早を脱いだ深月が万理たちから解放されてやってきた。
今の話が聞こえていたようだ。
「どっちも大きいじゃん」
と言って清春に笑いかけている。
それを受けて則雄が言う。
「そうだなあ。
清春は、パッと見、細身なんだが、意外と腕とか太いしなー」
身長もあるし、サイズ合わせが難しい、と則雄は言った。
「そうだねー。
清ちゃん、意外に筋肉質だからねー」
と深月が笑う。
「お前、いつ、清春の身体を見た……」
と陽太が言うと、
「いや、だって、衣装合わせで着たり脱いだりしてるし」
と深月は特に弁解する風でもなく言う。
「まあ、どのみち家族なんだから、家で見るだろ」
と陽太の嫉妬を軽く笑った則雄は、メジャーで清春と陽太の肩幅を測ってみながら、
「体格的には、清春と陽太は似てるかもな。
二人で舞うの、ちょうどいいだろ」
と言ってくる。
それを聞いた深月も笑って頷いた。
「そうだね。
身長も体重もおんなじくらいだよね。
筋肉質で胸板が厚いのもいっ……」
しょ、まで言わずに、ピューッと逃げる。
いや、逃げるとかえって怪しいだろうが……と陽太は赤くなった。
「船長」
と案の定、ドスの効いた声で清春が言ってくる。
だから、今、船長やめろ……と思う陽太に、清春は、
「神事の前に深月に手を出すと、祟られるぞ」
と言う。
いや、祟るのお前だろうが。
この近親相姦神主め、と思ったとき、ちょうど、針山のばあさんに、
「はーい、次は陽太ちゃんよー」
と子どもを呼ぶように呼ばれた。
あのくらいの歳になると、全員子どもに見えるんだろうな。
則雄さんですら、ノリちゃん、お菓子あげようとか言われてるもんな、
と思いながら、陽太は、おばあさんと万理たちのところに行った。
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