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理由がありませんっ
なんで神様を信じないんですか?
しおりを挟む結局、二人で軽く船で食事をとって、万蔵の神社に行った。
「ほう。
これが神楽殿か。
まだ新しいようだな」
と陽太は境内の端に作られた神楽殿を眺めている。
かなり簡易なもので、屋根はあるが、ほぼ吹きっさらしになっていた。
「今度の大祭用にわざわざ作っていただいたんです」
深月が神楽殿の屋根を見上げて、そう言うと、
「じゃあ、終わったら壊すのか」
と陽太が訊いてくる。
「さあ……どうなんでしょうね?
前回は壊したみたいですけど」
そう言ったとき、近くに居た大工の氏子さんが笑って言ってきた。
「いやー、祭り用に建てただけだからねえ。
台風とか来たら、ひとたまりもないから、壊しといた方がいいと思うよ」
開始の時間からかなり過ぎていたが、まだ、どやどやと人が来る。
寒いが、今日は位置確認のために、こちらに集まったようだった。
「あー、早くすませて、呑もう」
とおじさんのひとりが言う。
「そうだな、早く位置の確認をして」
と話していたが、いざ、舞台に上がって、移動してみたりすると、やはり、実際に踊ってみた方がいいと思ったのか、軽くおじさんたちは踊り出す。
そして、そのうち、いつも通りに練習し始めていた。
陽太はまだ舞うかどうか決めかねているようで、参加せずに、おじさんたちの舞をただ見ていた。
陽太は白い息を吐きながら、
「すごい迫力だよな。
本業じゃないのに」
と呟いている。
確かに、寒い中でも、此処まで舞い手の熱気が伝わってくる気がした。
そのとき、
「船長、こっちに座りなよ」
とやけに愛想のいいおじさんたちが陽太にパイプ椅子を勧める。
船長?
支社長のあだ名か?
あのスタンプのせいだろうかな、
と深月が思っている間、パイプ椅子を神楽殿の正面前に置いたおじさんたちは、
「まあ、深月と座って見ててよ」
などと、舞を強要することもなく陽太に言っている。
陽太は、
「……ありがとうございます」
と少し警戒して言いながらも、舞を見ていた。
そんなに真剣に見てるのになーと深月は思う。
そんなときの横顔はちょっと格好いいではないですか、
と思って眺める深月の視線に気づいたように陽太が振り向いた。
「意外とお好きなんじゃないんですか? 神楽」
と深月は訊いてみる。
「まあ、見てる分には意外と面白いかな」
と言う陽太に、
「じゃあ、なんでやってくれないんですか?」
と改めて訊いてみる。
「なんでって……。
ああ、そうそう。
俺は神様は信じないんだった。
だからだ」
そんな奴に舞われても神様も嫌だろう、と陽太は言うが。
「いや~、ああそうだったと思い出す程度なら、信じてくれって思ってますよ、神様も。
ところで、なんで神様を信じないんですか?」
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