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なんだかんだで魔法が使えました
青木ヶ原の樹海みたいな感じですかね?
しおりを挟む時折、白い鳥が、水面を跳ねている魚をぱくっとやったりしている湖の周りをぐるっと周り、アキたちは森へと向かう。
王子たちの顔に徐々に緊張が走ってきた。
「この森、なにが危険なんですか?」
すぐ目の前に来た鬱蒼とした森を見て、アキは王子に訊いてみた。
「迷うのだ」
「青木ヶ原の樹海みたいな感じですかね?」
まあ、あの中、普通に集落とかあったりして、方向感覚狂う場所というのは一部のようなのだが。
「なんでだかわからないが迷うんだ。
私もラロックも、かつては父も迷った。
来る時も迷ったし、帰りもまた迷うであろうっ」
「……開き直った方向音痴の人みたいですね」
と熱く語る王子にアキは言った。
「あれは私がもっと若かった頃」
いつの間にか横に馬で来ていたラロック中尉が語り出す。
いや、今でも充分若そうですが。
そのときは一体、幾つなんですか。
幼児ですか?
と思うアキにラロックは言う。
「あの日、私は早馬を飛ばしていて。
かなり長距離走っていたので、弁当は三つも向こうの町のイラークの宿のものだった。
道を間違え、迷いの森に入った私は――」
あの、その感じだと、迷いの森に入る前にすでに迷っているようなんですが……。
「そのことに気づき、慌てて目印をつけようとしたが、なにもなく」
そこでラロックは当時を思い出すように、唾を飲み込んだ。
「仕方がないので、イラークの弁当に入っていたパンをちぎって、通った道に落としながら進んだのだ」
……やっぱり、幼児だったのだろうかな、この人、とアキは思ってしまう。
森にパンを置いたら、どうなるか子どもでもわかる気がするのだが。
っていうか、通った道に落としてどうするのだろう。
また元の場所に戻るつもりだったのだろうか。
早馬で王子の城に向かおうとしていたはずなのに、
と顔に書きながらアキが思っていると、その顔を見てラロック中尉が言う。
「戻ったら別の道を探すつもりだったのだ」
……だったら、最初からその別の道の方に行けばよかったんじゃないですかね?
余計遠回りになってしまったようだし。
そう思いはしたが、話の腰を折っては悪いと思い、黙っていた。
「まあともかく、私は元の場所に戻ることはできなかったのだ。
何故なら、落としていった道筋にパンがなくなっていたからだ」
「あの~、イラーク様の作られたお弁当なんですよね?
それ、ケモノや鳥じゃなくても、私でも拾って歩きますよ」
とアキはうっかり言ってしまう。
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