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ささやかなる弁当
ついにその日が来たようですっ!
しおりを挟む「いや~、ついに契約してしまいましたね。
これから支払いがはじまるかと思うと、ドキドキしますね」
「ドキドキするの、そこか」
駿佑たちは清水に見送られ、車でモデルハウスを後にする。
「何処か行きたいところはあるか?
昼でも食べるか?」
「行きたいところ……」
万千湖は、ぎゅっと膝に置いていた鞄を握りしめる。
「ありますっ」
……なんだその気合いの入りよう、と駿佑は思った。
「いよいよ、貯金全額はたいたうえに、借金生活がはじまるわけですが……」
いや、すぐに返せないのなら、落ち着いてからでもいいんだが、と思っていたが、思い詰めた感じに語る万千湖がなんだかおかしかったので、そのまま眺めてしまった。
「課長……。
ついに宝くじ売り場に行く日が来たようです」
「……まだ行ってなかったのか」
新しいの買うんだろ? と言ったが、
「それもなんですが。
まだ、前の当選番号確認してません」
と万千湖は言う。
「……大きい金額は売り場に張り出してない限りないと思うが」
「1、2、3等でなくとも、4等かもしれないじゃないですかっ。
すみませんが。
売り場に行ってください、課長っ。
例え、100円しか当たってなくても、この1枚、なにか当たってたら、おごりますからっ」
と万千湖は取り出した宝くじを握りしめる。
お前、そのペラペラの紙にどんだけ期待をかけてんだ……、と思う。
「……まあ、1枚しか買ってないのに、末等でも当たればすごいか」
「当たってたら、課長に100均でなにか買ってあげますねっ」
そう万千湖は意気込んでいるが。
「……100均で買ったら、110円な」
足が出るぞ、と駿佑は言った。
「っていうか、お前が欲しいものを買え。
それから、末等は300円では?」
「あっ、そうなんですかねっ。
すごいですね。
100円だと思ってたのに、3倍ですよっ。
なにかこう、夢が広がりますねっ」
と万千湖はもう末等が当たった勢いで喜んでいる。
……300円すら当たってなかったら、なにか美味いものでもおごってやろう、と思いながら、駿佑は宝くじ売り場に万千湖を連れていった。
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