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ささやかなる弁当

わかりました、瑠美様

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 本部長と出会って話しはじめた駿佑たちと別れ、万千湖と瑠美は先にエレベーターに乗った。

 ……課長とふたりでお弁当を食べてたことを責められるだろうか、とビクビクしていたが、意外にも瑠美は機嫌がよかった。

 他に誰も乗っていないエレベーターで自ら階数ボタンを押し、瑠美は言う。

「ほんと、あんたといると、いろいろラッキーよね~。
 イケメン課長達と一緒にお食事できたり、カラオケ行けたり。

 ……まあ、今日、内緒で課長と手作り弁当食べたり、黒岩さんに会ってたのはどうかと思うけど」

 いきなり半眼の目に睨んでくる瑠美に、万千湖は、ひっ、と怯える。

「な、内緒にしてたんじゃないですよっ。
 お昼まで瑠美さんと会わなかっただけじゃないですかっ。

 あと、黒岩さんはいきなり何処からともなく湧いてきただけだしっ」
とつい、瑠美の迫力ある視線に、恩ある人をボウフラがなにかのように言ってしまう。

「……まあいいわ。

 別にあんたをうらやむつもりはないわよ。
 あんたが元アイドルでも、私は私でイケてるし。

 ついてるあんたの側にいると、私までついてくる気がするし。

 私、変に目立ったりいいことある奴を妬むのはもったいないと思うのよ。

 まあ、たまには弁当箱捨てたくなったりもするけど」

 たまにでもならないでください……。

「でもさ、一緒にいたら、あんたのように幸せをおすそ分けしてくれたりもするわけじゃない。

 まあ、ちょっと雁夜課長たちと親しくなれたり。
 黒岩さんて人を知っただけで、なんの進展があるわけでもないんだけどさ。

 いろいろチャンスがあるかもと思うだけで、夢が広がるわよね」

 瑠美さん、前向きな人だ。

 見習わなければな、と万千湖は感心しかけたが、瑠美は、

「……まあ、それはそれとして。
 これ以上、カラオケの話広げて、女子、増やすんじゃないわよ」
と両の腰に手をやり、鋭い眼光で脅してくる。

 わ、わかりました、瑠美様……。

 まあ、自分たちがしゃべらなければ、あとのメンツはわざわざしゃべって人を誘ってきそうにはないしな、と思いながら、万千湖は、こくこくと赤べこのように頷いた。


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