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ささやかなる弁当
こんなすごいイケメンとか聞いてない
しおりを挟む『太陽と海』のプロデューサーって、こんなに若くてイケメンだったのか。
勝手に腹の出たおじさんだと思ってた。
そう思う駿佑の前で、二人はまだ仲良さげに揉めている。
長年万千湖の成長を見守ってきた黒岩にとって、万千湖は身内のようなものだったのだが。
駿佑にとっては、いきなり現れた万千湖と親しいクールなイケメンだった。
「お前、こんなすごいイケメンとか聞いてないぞ。
絶対、詐欺だぞ、これ」
と黒岩はまた万千湖に言っている。
「そ、そんなことないですよっ。
だって、課長は私との見合いには全然乗り気じゃないし。
こう見えて駄目なところもあるんですよっ」
お前、なに俺の評価を引き下げようとしてんだ……。
「なにもなさそうだぞ、賢そうだし。
超エリートっぽいぞ」
「超エリートですよ。
課長にできないことなどないですよっ」
といきなり褒めまくった万千湖だったが、あっ、と声を上げる。
「そうですっ。
ありますよっ、課長にできないことっ」
万千湖は何故かできないことを見つけて嬉しそうだった。
詐欺ではない証拠が見つかって嬉しかったのだろうか。
……いや、もともと詐欺ではないんだが、と思う駿佑に向かい、万千湖は言った。
「メールの文章を長く打つ!」
「……それお前もだろ」
なんだろうな、このほのぼのカップル、と思いながら黒岩は二人を見つめていた。
「黒岩さん、冷凍食品じゃないのもありますよ」
と笑顔の万千湖が卵焼きを見せてくる。
「おひとつどうぞ」
と言われ、
万千湖がこの男にどんなものを作っているのか不安になったので食べてみることにした。
「卵焼きか」
黄色い卵焼きを見ると、なんだか懐かしい気持ちになってくる。
「そういえば、お前のお母さんの差し入れにもよく入ってたな。
美味かったな、あの卵焼き」
「ありがとうございます。
母にそう伝えておきます」
と微笑む万千湖に、やっぱりちょっと大人になったな、と思いながら、卵焼きをひょいと口に入れてみた。
こいつも親から家庭の味を受け継ぐような年に……
受け継……
「なにも受け継いでないじゃないかっ」
思わず叫んでしまっていた。
美味しいのだが、万千湖の卵焼きは彼女の母の味とは似ても似つかない味だった。
「ああ、それは料理本見て作った奴なんで」
と万千湖が笑う。
「『母に習う初歩の料理』って本です」
いや、実の母に習え~っ! とキレてしまった。
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