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凶器を探しています
私だけのせいでもないような……
しおりを挟む将生に冷ややかに見られた琳は慌てて言う。
「いえいえいえ。
私はただ、警察が想定しそうな可能性をすべて列挙してみようかなと思っただけですよ。
それで否定していかないと、いつまでも水宗さんの疑い、晴れないじゃないですか」
「……警察も笑いながら殺すところまでは想定してませんよ」
と青ざめたまま佐久間が言う。
「でもまあ、興味深いお話も聞けましたしね。
そのグレーのパーカーの人物を追ってみます。
『あんたのせいだ』が事件に関係あるのかないのかも気になりますし」
「追えるんですか?」
と琳が訊く。
「わかりませんけど。
あの辺り、大きなお屋敷が多い割には防犯カメラが少ないんですよね」
それで捜査が難航しているのだと言う。
「お年寄りが多いですからね。
そういうの嫌う人も多いみたいで」
琳は少し考え、
「そのパーカーの人と水宗さん、面識ないんですよね?
もしかして、知らない間に、その人とトラブルがあったのかもしれませんね。
此処最近の水宗さんの行動を防犯カメラで追ってたら、何処かで接触してるかも」
と言った。
「なるほど、そうですねっ。
すみませんが、水宗さん。
とりあえず、此処数日の、覚えてる限りのピンクのトラックの移動経路を教えてください」
佐久間は水宗に話を聞いて、急いで署に戻っていった。
「俺も長く出てるから、一旦戻ってくる」
と言って、将生も出ていった。
琳と水宗は困る。
「……どうしたらいいんですかね、僕。
普通に仕事してていいと思います?」
「いや~、どうでしょう。
佐久間さん、たぶん、すぐ戻ってくると思うんで」
水宗は会社に電話し、事情を話した。
社長は、
「それは迷惑かけたな。
娘に今度は落ち着いた色にしろと言っておくよ。
今から塗り直させようか」
と言ってくれたようだった。
いや、今、塗り直したら、完全に怪しまれますよね、と思いながら、琳は水宗になにか冷たい物でも、と思い、用意しようとした。
ふと気づく。
「あ、そうだ。
スコップを……」
と琳が渡そうとしたとき、佐久間が戻ってきた。
「すみません。
水宗さん、放置しちゃってっ。
あのピンクのトラックの移動経路、水宗さんに伺った道順に沿って、今、防犯カメラで調べてるんですけど。
なかなかカメラに映ってなくて。
水宗さん、大きな通りを通らずに、住宅街の道ばかり通ってますよね」
「……お得意様を回ってますからね」
「いや~、此処、広い道走った方がいいんじゃない? ってところも、何故か、防犯カメラと人目を避けるみたに脇道走ってるし」
「……ち、近道だからですよ」
なんか水宗さんが疑われるの、私のせいだけでもないような。
二人のやりとりを見聞きしながら琳は思う。
「普通にしてるのに怪しいって言うのも、ひとつの才能ですかね?」
安達さんが羨ましがりそうです、と琳は呟いた。
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