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箱から覗いてみました……

犯人かもしれません

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「へー、企業専門のコソ泥ね」

 じゃあ、うちには入らないか、と成田は呟く。

 今日は人手が足りているということで、成田がパンや総菜の販売に付き合ってくれた。

「しかし、此処、近いだけあって、うちのお客さん多いね」

 接客の合間に成田がそんなことを言ってくる。

「そうみたいですねー。

 総務の金子さんとか。
 営業の三田さんとか。

 ああ、あの人とか」
とあまりが指差す。

 スーツの男が離れた位置でこちらを見、立ち止まっていた。

「ああ、そういえば、たまに来るな……。

 あまり」

 はい? と見ると、成田が、
「あの男、服部さんのメモにあった男と似てないか?」
と言う。

「そうですか?」

「これといって特徴のない顔で中肉中背。

 印象に残りにくいが、唯一の特徴としては、額の真ん中にホクロがある……」

 額の真ん中にホクロか。

「なんか、ありがたい感じですね。
 ……ありますかね? ホクロ」

 思わず、二人で、じーっと見てしまい、それに気づいた男はぺこりと頭を下げ、何処かに行ってしまった。

「しまった。
 じっと見るなと言われてたんだったな」

「ああでも、私たちが此処で見るのはおかしくないと思いますよ。
 うちのお客さんが居るなーと思って見てたってことで。

 カフェで仕事中に凝視してたら、まずいですけど」

 一応、服部さんと海里さんには言っときますね、とあまりは言った。



「うちの会社に居たのか」

 午後のお茶出しに行くと、海里が言う。

「今のとこ、被害はないようだが。
 下見かもしれんな」

「危ないですよね。

 私、そんなに仕事ないですし。
 ロッカー見張ってましょうか」
と言って、

「何処の?」
と問われる。

「え? いろんなとこの――」




 また訳のわからないことを言い出したぞ。

「ロッカー見張ってましょうか」
とあまりが言い出す。

 海里の頭の中で、大量のあまりが、分裂して各フロアのロッカーに現れ、騒ぎを起こしていた。

「……やめとけ。
 それから、服部には俺が連絡しておく。

 お前はかけるな」

 万が一のときのために、服部の連絡先は聞いてある。

「そうですか?
 わかりました」
とあまりは小首を傾げながら出て行こうとする。

 ……こいつ、警戒心ゼロだからな。

 いや、コソ泥にじゃなく、男に、と思う。

 服部は隣りの部屋だし、気をつけとかないとな。

 毎晩泊まりに行ってやる、と思いながら、失礼しましたーと出て行くあまりを見ていた。


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